威嚇と暴力の上手なリーダーさんがいました。
子どもに指示したり従わせる時は基本、怖い顔をしてましたが、
いつも怖い顔ではありません。職員間で話す時はいつもニコニコし
ておられたし、子どもにもニコニコ接する時もありました。
私が担任している自閉症のお子さんに、ニコニコしながら
「○○、次は校外マラソンがあるよ」と声をかけ、ベソベソべそを
かかす、ということをよくやってらっしゃいました。このお子さん
は、校外マラソンが嫌いだったのです。
よく、本人の目の前で「悪口」というか「本人の嫌がること」を
言ってその場に笑いを起こし、とても和やかな空気を作りだす人が
います。人間関係もすごく良くなります。そういう方は冗談も上手
ですね。教師と児童・生徒の関係でも、そういうのを上手に使って
いる人もいます。それをねらっておられたのでしょう。
若い女の先生も、それを見ていて「いいなあ」と思ったのか笑顔で
「○○君、次は校外マラソンがあるよ」と声をかけべそをかかせて
いました。リーダーさんは、周囲から尊敬されまねるべき見本とさ
れていたわけです。
このエピソードだけなら、私もまっいっかあ、でほうって置いた
と思います。リーダーさんに物申すなんてできない感じでしたし。
しかしこのお子さんに、他害行動が出て来ました。
データを取ってみると、他の場面でもありましたが、このべそを
かかされた後も多いことがわかりました。そこでリーダーさんと若
い女の先生に
「次は校外マラソンがあるよ、と言った後、他害行動が出ているの
で、それを言うのはやめて下さい」とお願いしました。
ちょっとキョトンという感じでしたが、すぐ止めて頂けました。
この場面の他害行動は無くなりました。他の場面もいろいろ対応
して無くなりました。
よく思うのは、リーダーさんにしろ、若い女の先生にしろ暖かい
心を持っておられたんだろうな、ということ。それに比べて私は冗
談も言えないし、冷たい心の人間だったんじゃないかなあ、という
こと。これは私にとって結構コンプレックスでした。
この例は普通(?)の人にはいいことであっても、自閉症の人に
は良くないこともある、というかより繊細につきあった方がいい、
という例になるかもしれません。診断が大事、という話しにもつな
がりますね。