私の関わりのある法人
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※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2024年03月25日

勝敗へのこだわりのあったお子さんがゲームを楽しめる(学校、放デイ向き)




 これは、ご家庭ではあまり使えない方法かもしれません。

 しかし、学校(支援校・支援学級・放課後等デイサービス)などでは「参考になる」「使える」論文だと思います。

 私も「そうか、なるほど」と思いながら読みました。

 またまた私流にかいつまんで説明しますので、興味を持たれた方は原文にあたってください。

 「I 問題と目的」のところにこう書いてあります。

 自閉症もしくはそれを疑われる児童(中略)は、社会性・対人関係や想像力等に困難さを抱え、スキルを学習するためのゲームにおいても、勝敗へのこだわりが強く、周りの児童と楽しく活動できないことも多い。ゲームはやりたいのだが、自分勝手と思われるような振る舞いや負けたら怒り出すという行動に、周りの児童が不安を感じることもある。
 それら対人関係の困難さへの支援として、ティーチ・プログラムや応用行動分析等の様々なアプローチがなされてきた。しかし、それらは個別的・療育場面で取り上げる内容であったり、方法上の工夫であったりするため、支援学級の教育活動として展開するには限界もあった。

 わはは、その言や良し。「私は TEACCH でも ABA でもない、学校の授業で役に立つ方法を考えた」というわけですね。

 ただまあ、ここで言う「TEACCH プログラム」や「応用行動分析」という言葉は誤用だと、私は思うのだけど、しかしこちらの誤用のほうが一般的には流布しているのかもしれない。

 そして実践においても誤用している人が多いのが実情だと、残念ながら思う。

 そうなると、誤用のほうも語釈としては正しくなってしまうのか?

 私が誤用だという根拠は、実際に著者自身が 「IV 考察」で「なぜうまくいったのか」書き出しているのだけど、そこにこう書いているのですね。

まず

(1) プログラムの流れを一定にしたこと
 表2で示したように、各回のグループ学習の内容そのものに変化はあるが、その流れ・ユニットは一定にして見通しをもって取り組めるようにした。それにより、本児の安心感は高まったと思われる。また、表3のように、プログラムの中身も全て替えてしまうのではなく、前時までに取り組んだゲームも取り入れた。(後略)
  
この「変えることはひとつだけ(あるいは少なくする)」とか「フォーマットは一定に」は、私は TEACCH から学んだのだけど。また

(2) ルールの明確化
@説明書の活用-自閉症のある人にとっては、「書き言葉が第一言語・話し言葉は第二言語」と喩えられるように、視覚情報は必須の文援となる。今回の取組では、ゲームの説明を話し言葉ではなく、説明書という形で提示したことで本児への分かりやすさは格段に高まったことが示唆される。

 これって、まさに TEACCH プログラムそのもののように思えます。「書き言葉が第一言語・話し言葉は第二言語」だから「見てわかるもの」で伝える。

A負けたときの対応の明確化−勝敗へのこだわりの強い本児にとって、負けは受け入れがたい事実となっていた。今回は、“負けてもいいことがある”、すなわち、万が一負けても、次のゲームのテーマなどを選べる権利を得られるというルールを設定した。それにより、勝敗そのものよりも、ゲームそのものを楽しむことに気持ちが向いたと思われる。

 つまり、強化子を随伴させる・・・

 そして大事なことはより多く流布している誤用の「TEACCH プログラムだからこうします」「ABA でやるからこうします」と機械的に当てはめる実践はたいてい失敗し、違うのではないか、と考えてそのお子さんに合った対応を考えていくと、本当の TEACCH であったり、ABA であるようになる(あるいは行動分析の言葉で記述できる)、ということになるのじゃないかな。

 さて、実際の実践を見ていきます。

対象児について(一部kingstoneが簡潔にしている)

(1) 対象児A:支援学級在籍5年生女子(知的発達の遅れは無い)
得意:絵を描く。パソコンを操作する。
一人で遊ぶことが多く休み時間は、本を読んだり、折り紙を折ったりしている。
興味のあることには集中して取り組む。
一度集中するとやめられなくなり、ルールを守れないことも多い。
勝敗へのこだわりが強く、負けてしまうと暴言、暴力で気持ちを表すことが多い。

 アセスメントでセルフコントロールスキルのチェックを保護者・学校・事業所など5名の担当者で行った結果の一部(表1)。
これは
当てはまる・・・4点
やや当てはまる・3点
あまり当てはまらない・・2点
当てはまらない・1点
の4件法でやっているので、平均というものがあれば2.5点になるはず。

 この図(表1)のように、いずれも低い点数が出ている。

スクリーンショット 2024-03-24 23.01.27.png

 なお、交流級で行った横浜市教育委員会の Y-P アセスメントによると

「自分のことがあまり好きではない」
「自分をあまり大切に思わない」

と回答している。決して「今の自分でいい」とは思ってないんだな・・・



実践展開

指導目標の設定

長期目標:友だちとなかよく学校生活を送ることができる。
短期目標:負けても気持ちを切りかえて最後までゲームをすることができる。(2学期)

グループ学習の流れ

ウォーミングアップ
全体の見通しを持つ部分?
チャレンジタイム
ゲームをする
ワークシート活用
お楽しみタイム
チャレンジタイムでできるようになったゲームをする
ワークシートは使わない
児童で進める

ゲーム内容

どんなゲームをやったか、どういう内容で、どういう配慮をしたが、表4にまとまっていますが、こちらでは私が適当に

@どんなゲームか
Aどんな配慮をしたか(全部ではなく、省略したものもあります)

をそれぞれかいつまんで説明してみます。おおむね 1.から9.に向かって進んでいったようです。

1.ティッシュゲーム(iPad 無料アプリ)
@たぶんこの「無限ティッシュ」のことだと思うのですが、現在のをやってみると規定時間内に100枚出せたら、また次の回が始まるので終われるのかな?と不思議に思いました。何か1箱終わったら終わりとか時間で区切ったりとかしているんだろうか?

Aどんな配慮をしたか
・「どんまい」「おめでとう」「まあいいか」「ありがとう」の言葉をプリントにしておき、その言葉を言ったらポイント。
・気持ちを切り替えてゲームを続けられたらほめる。

2.ドッカンゲーム
@タイマーをセットし、ボールを回す。
ボールを持った人はその回のテーマ(例えば果物とかだな)にそった内容の言葉を言う。
タイマーが鳴った時にボールを持っていた人がアウト。

Aどんな配慮をしたか
・「どんまい」「おめでとう」「まあいいか」「ありがとう」の言葉をプリントにしておき、その言葉を言ったらポイント。
・アウトになった人に「ドンマイ」と言ってポーズをする(これ、雰囲気が良ければめちゃ受けると思う)。
・アウトになった人は次のテーマを決められる。
・友達を傷つける言葉を言ったらNGワードと知らせマイナスポイント。

3.ぼうずめくり(ひらがなカルタ)
@百人一首でも、他のカルタでもできます。
字札・絵札を混ぜて裏返して積み上げる。
あらかじめ「あ行」「か行」「さ行」などと当たりの行を決める。絵札が出たら、その札は(もし既に持っている札があれば)自分の持っている札も合わせて全部前に出す。
「あ行」「か行」「さ行」などの当たりの札が出たら前に出ている札は全部もらえる。
当たり以外の字札が出たら(たぶん)その札だけ自分のものになる。
(しかし、こんな学校っぽいことをしなくても、普通の坊主めくりでも楽しめるな)

Aどんな配慮をしたか
・当たりになった人に「おめでとう」という(で、たぶんポイント)。
・絵札が出た人に「どんまい」と言ってポーズをする(で、たぶんポイント)。
・友達を傷つける言葉を言ったらNGワードと知らせマイナスポイント。


4.反対言葉カードゲーム
@裏を上にした単語カードを2枚めくり、反対言葉だったら自分のものになる。
 (別に普通の神経衰弱でも楽しめるな)

Aどんな配慮をしたか
・「どんまい」「おめでとう」「おしい」「すごい」などの言葉を(自分で?)選びプリントに書く
・NGワードを(自分で?)選びプリントに書く
・友達をほめたり、はげましたりすることができたら認める(と書いてあるのだけど、ポイントは?)
・よい言葉かけができたらとりあげて、次回の言葉選びに加える

5.ソーシャルスキルカルタ
@なんかソーシャルスキルカルタというのがあるのですね。私は知りませんでしたが、あっても不思議は無い。それを並べて先生の言葉を最後まで聞いてからカルタを取る。
(正直なところ、いったい何がどうなのかわかりません。で、検索をかけたら画像が出てきました。なるほど、動作や、言葉や、気持ちなんかが書いてあるから先生が「こういう時は」と具体的な状況をあげて、それに適切なカードを取るということかな)
カルタの並べ方は漫画や映画『ちはやふる』でおなじみの競技かるたの形式でやっている。

Aどんな配慮をしたか
・気持ちを切り替えてゲームを続けられたらほめる
・イライラしたら深呼吸したり休んだりする

6.探偵ビンゴ
@たぶんですが、マス目(2✕2からいけると思う。5✕5までいくとかなりたいへんか?支援級とかだと、その場にいる人数全員分のマス目が作れる必要があると思う)を作った紙を用意し、自分の名前と他人の名前を好きなところに書く(余ったところは オールマイティーにする必要があるだろう)。
 名前の人のいいとこをカードに書く(いいところカード)。(ひょっとしたらマス目にも同じことを書く?)
 先生がカードを引き、書かれていることを言う。
 そのいいところがある人は立ち、「◯◯さんです」と(先生が?)名前を発表する。
 みんなで確認し「なるほど」と言い、マス目に◯をつける。
 ビンゴになったら「ビンゴ!」と言い、そのまま参加し続ける。
Aどんな配慮をしたか
・友達の名前がわからない場合は名簿(名前が見てわかるもの)を用意する
・発表したら周囲のみんなは「なるほど」と言う。


7.黒ひげ危機一発
Aどんな配慮をしたか
・まず最初に飛び出るのを「当たり」にするか「はずれ」にするかを決める(なるほどな)
・友達がやっている時に待てたらほめる。(こういう、「特に行動しない場合」に対して ABA で「死人テスト」と言って認めない場合があるけれど、状況によっては「特に行動しない場合」を認めるのはすごく大切だと思う。これは私の誤解なのかな?)


8.カードマッチング(動物絵あわせカード)
@配られたカードを相手から見えないように持つ
 自分の番が来たら、1回だけ「◯◯さん、△のカードを持っていたら下さい」と言う。
 ◯◯さんが持っていたら「はい、どうぞ」と言って渡す。
 「ありがとうございます」と言う。
 持っていなかったら「ありません」と言う。
 それに対して「そうですか」と答える。
 他の人は「おめでとう」「どんまい」と言う。
 カードが揃ったらみんなに見えるように置く。
 たくさんカードが揃った人が勝ち
 特別賞として一番早く無くなった人にポイント?
Aどんな配慮をしたか
・他の人の質問をよく聞いて覚えていると、相手が何を持っているかわかるかもしれないことを意識させる
・勝ちのポイントを複数用意し、1つにこだわらないようにする


9.風船バレー
Aどんな配慮をしたか
・「◯◯さん、お願い!」「OK」「おしい」「どんまい」「サンキュー」など友達をはげましたりできたら認める。

で、論文に方法のところに「準備物」としては出てきませんが、上に書いたように考察のところで

「ルールの説明書」

を作っていることがわかります。これも大きな配慮ですね。私は放課後等デイサービスでは、よく1枚ものの「ルールペーパー」を作っていました。もちろん、お子さんによってよくわかってもらえるように書き方も工夫しないといけないことがよくありました。
また「はげまし言葉」と獲得ポイントを書いたワークシートは論文中に出てきます。

 そして、こういうゲームを、交流学級でもできるようにしたとのこと。

結果

スクリーンショット 2024-03-25 4.24.06.png

 暴言やもの投げが6回目以降出現していなかったのに、10回目にたくさん出たのは、「児童たちのみ」で行ったためだそうです。

 しかし、全体を見ればどんどん落ち着いていっているのがわかります。

 このゲームの配慮事項を見ていて、それ以前の他の子たちとも楽しい雰囲気のクラスを作れていたら「『どんまい』と言いながらポーズをする」とかを取り入れたら、めっちゃ楽しい雰囲気になり、対象の児童もそれに巻き込まれていくだろうな、と読んでていても楽しくなりました。

 ゲームそのものの勝ち負けにも工夫を凝らしたり、ゲームそのものは負けていても面白いことが起こったり、ポイントが得られたりして、ゲームをすることが「楽しくない」ものにしない工夫がされている、というのがいいですね。

 で、繰り返しゲームをやっていくうちに、ゲームの勝ち負けだけを楽しむのではなく、ゲームをすることそのものを楽しめるようにしていった、その中でソーシャルスキルも身につけていった、というところがポイントかな。

 「何とかしたい」と思っている教師やスタッフの人たちがマネした場合は、結構高い確率でうまくいくんじゃないだろうか、と思えました。

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2024年03月23日

Kansai WordPress Meetup に行って来た



 今日は、久しぶりに

Kansai WordPress Meetup@大阪

に行って来ました。

 もう WordPress の使い方をすっかり忘れていて、前回行ったときに教えてもらったことで


のサイトを何とか作ることができました。

 今回はテーマが『 WordCamp Kansai 2024 & WordCamp Asia 2024』を振り返る、でした。

 しかし、私は、現在上記サイトにメーリングリストや掲示板の機能がつけられないか、と2つのプラグインを試し始め、どちらもユーザーグループを作るところで行き詰まっているので、何とかしたい、という気持ちがありました。

・WP Mailster でメーリングリストを作る
・BuddyPress で掲示板を作る

 この2つなんですね。自動で現れるはずの「グループ追加」の画面が出てこない・・・

 そしたらアサカワさん、ツブさんというプロの方が親身になっていろいろ試して下さいました。

 が、まあ、一発解決とはいかず、上記の「プラグイン」と相性のいいテーマ(見た目の基礎になるもの)を選んだり、他のプラグインが悪さをしていないか試してみたり、とまだまだ試行錯誤が必要とのことでした。

 まあそうやろな。上記の機能はサービスを実装しようとすれば「お金が結構かかる」機能で、それをタダでやろうってんだから、難しくて当たり前。

 しかし、大方針がわかっただけでもありがたかったです。

 会場

会場.jpeg

 梅田貨物駅跡地にできた「グランフロント大阪」にある「カンファレンスタワー3」16階にある、アールスリーインスティテュートの中の広い空間で開催されました。

 梅田貨物駅跡地にできた「グランフロント大阪」って、でっかいビルの足元が、傘をささずに歩き回れる空間になっていて連結されています。すげえ・・・

 また、WordCamp Asia 2024 のお話は、意味のわからない(最先端の言葉がいろいろ出てくる)ながらも楽しそうだな、と思わされました。

 この Asia 大会は台湾で開かれたそうで、台湾みやげのお菓子も頂いて食べました。

 下は、私が頂いた台湾でのカンファレンスでのおみやげ。

おみやげ.jpeg




posted by kingstone at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | ネット・パソコン・携帯など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月21日

暴力・暴言・物壊しが無くなった取り組み



実践研究
広汎性発達障害児が示す暴力・暴言・物壊しの低減を目指した自己記録を中心とした介入パッケージ
小笠原恵・末永統(2013)『特殊教育学研究』51, 2, 147-156

 なんか、めちゃ面白かったです。
 ものすごくかいつまんで紹介するので、興味をもたれた方は、リンクから原文にあたってください。

 まず、どんなお子さんだったか。

・小学校1年生
・週2回通級指導を受けていた
・本人からは「聞くことが苦手」との訴えあり
・虫のフィギュアや電車や車の玩具、組み立てブロック、ゲームで遊ぶのが好き
・他者に感謝されたり賞賛されることを非常に喜ぶ
・自分だけではなく他者が叱られることを極端に嫌がる
・些細なミスでも自分が犯すことは許せない

そして

・5歳時より、他者に対して叩く・蹴る等の暴力や暴言、物を投げたり職飛ばしたり破くなどの行動が頻発

どういう時に起きていたか

・自分の行動が自分の達成基準に満たなかったことがきっかけになる場合
・他人の行動が自分の思いと異なった場合
・状況に適合しない無理な要求をして拒否された場合

それまでの親御さんの対応や状態

・言葉で状況を説明して説得したり、注意をしたり、理由を聞く
・抑え込んで制止
・最終的に、本児の要求を飲むことも
・これらの行動が頻繁に生起するため、賞賛されたり感謝されたりすることは極端に少ない

また

・担任では対処できないため母親が1日中つきそい

そこで方針を

・「叩く・蹴る等の暴力や暴言、物を投げたり職飛ばしたり破くなど」の低減
・自らいやな事態から逃避でき、賞賛される行動、他者から感謝されることを増やす

とします。手続きとして

@標的(困った)行動を自分自身で記録
A良い行動(適応行動)が起こった時は褒め、回数を自分自身で記録
B記録内容から「良い行動の記録」ー1/3✕「困った行動の記録」(つまり3回で1点引くイメージ)で著者が計算し、点数に応じて強化子を渡す
※記録用紙は「ムシキング成長日記」。強化子は「ムシキングカード」

 ここまで読んで私は「自分で記録するって、めっちゃ難しいのじゃないかな?特に困った行動なんか記録するの嫌やん。そんなことだいたいやってくれるのか?」と思いました。

 しかし、インフォームドコンセントのところで著者が本人にも説明し、本人が

・キレるのを減らしたい
・(この試みを)やりたい

と言ってから始めてはる。

 ということはここまでの時点で、(ABA の専門家はこんな言葉は使わないかもしれないけれど)かなりの関係性を作っておられたのだな、ということがわかります。

 なお強化子のムシキングカードですが、いろいろ点数があるらしく、私などややこしすぎてさっぱり頭に入ってきませんが、たぶんよく知ってる人ならびっくりするほど理路整然と、やり方が組み立てられていたのじゃないかな(ちゃんと論文には書かれています。私に理解できないだけ)

 ひょっとしたら、もともと詳しい方だったのかもしれませんが、本人さんが好きだから、改めて勉強されたのかも。

 なお適応行動としては「キレかけた時」に「保健室へ行く」「家へ帰ってゲームをする」など言えること(以前はそういう場合に親が本児に言っていた言葉)とし

・適応行動が起きたら「さすがだね」「がんばったね」「よくやった」という言葉をかける
・家事活動を「やって」と依頼して、あるいは自発的にやってくれたら「ありがとう」「たすかった」「うれしい」という言葉をかける

ことを親御さんに依頼している。また著者は本児には上記の言葉を他者に無理に言わせることがないように言っている(このあたりも関係性ができているのを感じる)。そして親御さんにはまた

・自己記録をつけるよう指示しない
・キレた時は危険がない限り黙って離れておくこと
・介入期間はムシキングカードを買ってあげないこと
・親も記録をすること

をお願いしている。

 で、開始したのだが、グラフを見てみると自己記録に、適応行動はたくさん記録されているが、困った行動はあまり記録されていない。母親の記録には困った行動もそれなりに記録されている。そらそうやろなあ・・・なのですが・・・

 しかし、増減を繰り返しながらも困った行動は減っていっている。

 また母親にお願いした記録は、最初「困った行動」が起きた時だけだったので、母親が「良かったこと」も記録したいと工夫して、記録し始められたと。

 推測ですが、このことで「良いところを見る」視線になり、「さすがだね」「がんばったね」「よくやった」「ありがとう」「たすかった」「うれしい」という機会も増えたのではないかと思われます。

 そして、28週目には「困った行動」はほとんど出なくなったので、母親のつきそいが終了しています。

 なお6年時の母親からの報告で、これ以後、学校でも家でも「困った行動」は起きていない、と。また本児からの報告として

「あのころはキレざるを得なかった」
「もうキレないことにしたんだ」

ということでした。

 むつかしげな言葉を使えば、自己記録によるトークンエコノミーとレスポンスコストの併用、ということになるのかもしれませんが、意図を越えて(しかしそれは著者の関係づくりのうまさ、親御さんへの的確な指示があってのことだと思う)周囲が変容し、お子さんが変わっていった、と思われます。

 また機能的アセスメントでも説明できるだろうな。

 なお、かいつまんで、私の雑な言葉で紹介しているので、興味を持たれた方は、是非、本文にあたってみて下さい。

posted by kingstone at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月19日

「ごめんなさい」と謝ること&褒めること、についての思い出ひとつ



過去の記事61+α(ごめんなさいは奥が深い)
この記事の下のほうに書いてあるエピソードをもう少し詳しく書いてみます。

 実はこれ、丹波篠山で、宴会をしていた時のことでした。

 広間で図のように、大人も子どももそれぞれの膳を前にして、食べ、飲み、談笑していました。宴もたけなわになり、子どもたちは食べ終わって遊び始めました。
※図はクリックすると大きくなります。

ごめんなさいに至る状況.jpg

 A君はかなりかたよりの強い自閉症。いろいろな意味で障害は重いお子さんでした。小学校6年生くらいだったかな。元々は孤立型です。下手にこちらが音声で関わったり、いらぬのに身体介助しようとしたりするとパニック(癇癪)を起こし、場合によっては破壊などもしかねないお子さんです。

 B君はどなたかの兄弟児さん。まだ就学前の小さなお子さんでした。
 
 そのうちにB君がA君の側に行って、A君に軽く飛びかかる、A君はそれをがしっと受け止めて少し反り、ポンと落とす、B君は大笑い、というのを繰り返して遊び始めました。 
 
 それを私はびっくりしながら見ていました。A君が人と関わって遊んでる!

 やはり、その場にいた人たちの作り出している雰囲気というのもあったのでしょう。

 ところが、A君は体の使い方も不器用だし、力の入れ方も適切な強弱がわかりづらく、B君がこけて(転倒して)しまいました。B君は大泣きしながらお母さんの元へ行きました。

 その場にいた人たちは、誰も特に動きに変化はなく、談笑していました。

 しかし、A君は少し落ち着きなく動きまわり、パニックになりかけの雰囲気になりました。

 するとsyunさんが立ち上がり、A君の側に行き、たぶん音声言語なしで軽い身体介助でB君親子の側に行き、(ここで「さあ、謝るで」とか言ったかどうかは覚えていない。と言うかあっても聞こえないくらい小声だったでしょう)一緒に深々と頭を下げ「ごめんなさい」と、これは周囲にも聞こえる声で言いました。

 その後はA君は落ち着いてその場に居ることができました。

 syun さんが席に戻って来た時に、私は

「すごいね。でも、なんで一緒に行って謝ろうと思ったの?」

と尋ねたら

「A君が、どうしたらいいかわからなくて困ってる、と感じたから。他の人は気づかなかったみたいね」

と言い、私はまた

「すごいね」

と返しました。


 これは学校などでもよく指導(?)される「ごめんね」「ああいいよ」と形だけやりとりさせるものとは違う、ということはおわかりになるでしょう。

 また、最後の syun さんと私のやりとり。「褒める」ということに関して、私と syun さんは、周囲に説明する時に違いがありました。

syun さんは「成人は褒めるな(失礼やろ、というニュアンスで)」

私は「成人であっても褒めたらええやん。心の底から思った通りに」

 ・・・たぶん同じことを言ってるんですけどね。

 指導しようとか、こちらが上で相手を下に見て褒めるとかいうのは、(子どもに対してもだけれど)成人に対してはすごく失礼。しかし、心の底から「すごいな」「頑張ってはるな」「こういうとこいいな」とか思ったら素直に口に出していいと思うのですね。

 で・・・この「ごめんなさい」の時、syun さんはすごく褒めてほしそうに私には見えました・・・

 syun さんの場合、やってることのすごさ(成果の大きさ)に比べて、褒められることの総量はすごく少なかったんだろうな、と思います。もちろん一部の人からは強く支持されてましたが。

 視覚的・具体的・肯定的と言うけれど、障害の有無には関係なく、大人も子どもも肯定的(承認)に関わってもらえるの、大事だと思います。

 私自身は、とても褒めて欲しいですね。


posted by kingstone at 11:04| Comment(0) | TrackBack(0) | おめめどう・視覚支援 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月12日

排泄物の異食が消失した事例



 異食について調べていて、このレポート(論文?)を見つけました。

「重度知的障害者に対する行動障害軽減〜の取り組みー排泄物の異食が消失した事例の支援からー」
伊豆山澄男・田口正子・篠原浩貴:『国立のぞみの園紀要』(2014),7:72-77

 しかし、参考文献について検索していたら、下のニュースレターを見つけ、この事例も載っていました。
 ひょっとしたらこちらのほうがカラー写真もあるしわかりやすいかと思います。

のぞみの園ニュースレター 第40号平成26年(2014)4月1日発行
(特集ーのぞみの園における強度行動障害への取り組み)

 ではレポートから。

対象者 Aさん
重度知的障害・自閉症
IQ測定不能、障害区分5、男性、レポート執筆時 50代後半。
乳児期よりクレヨン・紙・砂などを口にする異食が頻繁に見られた。
7歳で知的障害児施設に入所後も、タバコの吸い殻、コーヒー粉、石鹸、茶葉、毛髪、ベニヤ板、紙、毛糸、靴下のゴム、自分の排泄物の異食が頻繁だった。

1996年(43歳)のぞみの園に入所。安全や健康に対する配慮のために生活に一定の制限。

2004年 これまでの支援を見直し「異食改善への援助について」をまとめる。

・当時,激しい異食のため,支援員による絶え間のない見守りや生活全般で多くの制限
・意図的と考えられる尿失禁の回数が増えた
    ↓
絶え間のない見守りが行動障害を助長している可能性
    ↓
支援会議により,「異食改善への援助について」の以下の内容をB寮全体で周知

@過干渉をやめ穏やかに見守る
A寮内の役割・当番の習慣化に試みる(コップ配り,洗濯物たたみ)
B 夜間に他利用者の居室で寝ている時は特に注意して見守る
C支援方法について職員の意識統一を図り実施すること

結果
寮全体で統一的な支援を行ったことで,寮内の役割・当番の内容を理解し、次第に本人にとって心地よい環境へ向けて改善が見られ、異食が軽減していった(消失はしていない)。

2005年(52歳)より専門的な支援を受けられるC寮転所。
転所当初はそれまで減っていた異食が増加。

実践は TEACCHプログラムのアイデアを参考に

・居住環境の構造化「居住の場における混乱防止の為の応急措置」
・日中活動「居住の場から通い,安定した活動を行うことにより自尊心を高める」
・自立課題は「居住の場における余暇対策としての自立課題の設置」
・スケジュール「見通しを持ち,安定した生活を送るため」

行動障害全般は,次第に穏やかになり,安定した生活を送っていた。
しかし,異食,特に排泄物の異食が消失することはなかった。

2009年(56歳?)同様な支援を受けられるD寮転所。

D寮で新たに工夫されたこと

(5)作業の代替活動
 D寮に転寮してから,これまでの 4つの取り組みに加え、新たな支援の検討が加えられた. 天候などの様々な都合により作業活動へ出られない日の代替活動として,居住場所で作業の代替活動を行うこととした。毎日行う作業活動と同等の時間が過ごせるよう,居室において自立課題を用意した。 また, 自立課題棚の最下段には「お茶カード」を用意し,課題終了後にはお茶と交換することとした(写真3.自立課題とお茶カード).A さんの大好きなお茶カードは,自立課題終了の見通しを持つとともにモチベーションを高めることが可能となり,居室における代替活動の意欲に繋がった.

(「やることがあること」「楽しみがあること」ですね)

(6)報酬の工夫
 A さんは,お茶だけでなく,缶コーヒーも好きである。そこで,缶コーヒーを報酬とする方法を検討した.缶コーヒーと交換ができるコーヒーバックを片手に日中活動へ出かけて行くことが日課となり、作業が終了し D 寮に帰すると、楽しみにしていたコーヒーを飲むことが日課となった。このコーヒーバックの利用は、日中活動の場所と寮との移動を,支援員の付き添い無しで移動する初めての試みでもあっ
た。
 また,週末の活動後の報酬はお茶と決め,活動後にお茶と交換した。A さんは曜日の理解は難しいが,このバックにより平日(日中活動のある日=缶コーヒー)と週末(日中活動のない日=お茶)を区別し,経験的に一週間単位の見通しが持てるようになったと考えられる

(これも「楽しみがあること」と、ひょっとしたら「カレンダー(月・日の見通し)の必要性」という話もあるのかも)


 このレポートが出た時点(2014年)で過去2年半、異食が完全消失しているということだから、2011年くらいに消失したと考えていいだろう。D寮に転所して2〜3年くらい、ということか。

 1996年から考えれば、いろいろ考えてから15年、支援の見直しが2004年ですからそれから7年くらいかかっているわけです。
 もちろん長くかかっているのですが、成人になっても改善できるんだ、という希望でもあり、また幼少時からこのような暮らしができていたら、もっと早い段階で「異食の消失」は起こったかもしれません。

 なお、参考文献にあげられていた『あきらめない支援』は検索をかけても手に入れる(購入する)方法を見つけることはできませんでした。私は持ってて記事も書いているので、そちらのリンクを貼っておきます。

参考文献
1) 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園:あきらめない支援−行動問題をかかえる利用者に対する入所施設における実践事例集一.朝日印刷工業株式会社(2011).


posted by kingstone at 20:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする