※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2024年01月31日

『日本の死角 現代ビジネス編』講談社現代新書 その1




『日本人は集団主義という幻想』
高野陽太郎

 古くはパーシヴァル・ローウェルが『極東の魂』の中で言い、ルース・ベネディクトの『菊と刀』で「日本は集団主義」という日本人の常識が確立した。

 しかし、アンケートで比較調査する研究を集めてみると、以下のようになる。

日米どちらが集団主義か.jpg

 つまりいろいろな場合があり、まずは同じようなもん。

 ルース・ベネディクトの場合、第二次世界大戦時に対日研究のために招集されている。当時の日本は対外戦争のために集団主義であっただけではないか。アメリカも赤狩りの時代は団結を乱す異分子を排斥する集団主義が強かった、と。

 「日本人が他国の人より集団主義的である」というのは人の行動の原因を推定する時に、その人がおかれていた状況の影響力を見逃して、その人の内部にある特性が原因だと考えてしまうバイアス「基本的帰属錯誤」ではないか。

 なんか、めちゃくちゃ納得してしまいます。




日本人が「移動」しなくなっているのはナゼ?地方では不気味な格差が拡大中

 図1 は東京、中京、大阪の三大都市圏に移動した人口。

三大都市圏への移動.jpg

 大きくみれば右肩下がり。理由は少子高齢化もある。しかし

図2は5年以内に他県に移動した人びとの図になるが、若者も移動は現象傾向にある。しかし(私が◯く囲ってしまってますが)20〜24歳、つまり大学進学・就職で移動した若者は増えている。

5年前からの移動割合.jpg

 そこから著者は、地方にとどまらざるをえない者、三大都市圏(に大学にしろ専門学校にしろ多い)に転出できる者の格差が生まれているのではないか、と。また現在は(高望み(?)しなければ)地方にも仕事がある(ただし生まれた地ではないかもしれないが)ので、三大都市圏に出ようというインセンティブははたらきにくくなってるはずだけど・・・と言ってはる。

 しかし先日の「「過疎地域におけるIターンの現況と将来展望」を読む」の中でも、いかに仕事を作り出せるかが大事だな、と思ったけれど、地方で人がどんどん出ていく過疎化の中で、海士町みたいにどんどん作り出していっても少しずつは人口が減っている状況で、「地方にも仕事がある」ということを維持できるのだろうか?

 なお、最近のニュースでこういうのがありました。


 記事の中に「東京圏」への転入のグラフもあり、それだと約 13万人の転入超過。

 う〜〜ん、どうなんだろうな。



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2024年01月30日

「過疎地域におけるIターンの現況と将来展望」を読む



「過疎地域におけるIターンの現況と将来展望 ー海士町におけるIターン者の事例研究」
という2014年の卒業論文を手に入れたので読んでみました。

 なお、海士町は有名だから、私も言及した記事はすでにいくつか書いてますね。記事末に入れます。

 私は50年近く前の、不勉強な学生だったため、卒論執筆の義務も無かったので、書かず、またあまり勉強もせずに卒業してしまいました。
この論文は、先行研究・参考文献を調べ、現地調査し、関係者にインタビューして作成されています。正直、読んでてとてもうらやましいです。

冒頭、海士町の町長を4期(2002〜2018)つとめた山内道雄氏の言葉を引いています。

「『若者』『馬鹿者』『よそ者』がいれば町が動く」

なお、山内氏は2024年1月3日に亡くなっておられます。享年85歳。

山内道雄(Wikipedia)


 Iターンは、結局、他地域から移住して来た、ということで「全然ターンしてないやないか」とツッコミたくなりますが、まあ過疎地の移住対策として

・地域おこし協力隊
・集落支援員

などの国の施策があるが、それ以外に

・商品開発研修生
・マルチワーカー

などを行った、と。あと、「高校の魅力化プロジェクト」として、

・AMAカフェ
・AMAワゴン

などもやり、その派生活動の中で遠方の人が海士町のことを知り、やって来たりもしている。

その結果どうなったかというと、こちらの


から人口動態を見てみると
※図はクリックすると大きくなります。

スクリーンショット 2024-01-30 14.06.11.jpg

右肩下がりではあるものの、2002年(山内氏町長就任後))傾斜がゆるやかになり、年少人口はかなり頑張っている様子が見てとれます。

また、年齢別人口構成を見てみると

スクリーンショット 2024-01-30 14.11.13.jpg

グラフのある2010年と2023年を比較すると、0歳〜50歳がぐっと増えていることがわかります。高校世代は島留学のせいだとしても、他の年齢も増えてます。


 さて、Iターンの動機ですが、


では

1. 仕事やりがい探求派
2. 生活革新チャレンジ派
3. 悠々自適暮らし満喫派

と分類しています。

 で、筆者はインタビューしていて、そのIターン動機を

1.目標としての事業、仕事
2.田舎暮らしというライフスタイル

が大きいのではないか、と考えてインタビューをしたのだが、結果として

1.パーソナルネットワーク要因(何か人の縁ができた)
人がやってくるのを待ってるだけではなく、いろいろな形で外部に紹介している。
2.目標要因(こんなことがしたい)
 仕事もだけど、「つながる図書館ーコミュニティの核をめざす試み」に出てきた司書さんとか、図書館が無かった頃からいろいろ自分で(もちろん町の指示・バックアップで)作り出している。
 また明確な目標を持って来る人がいることによって、町民が刺激を受ける。
3.(定住ということにこだわらず)キャリアアップのため

特に3.も大きそうだと気づいた、とのこと。

いずれにしても、モチベーションが高い人が多くなるので、活き活きとした雰囲気にはなるだろうな。

なかなか面白かったです。

2010年6月5日
2017年1月8日



こちらは採用システムのコマーシャル動画のようですが、海士町のマルチワーカーがどういうものか、というのもわかりそうです。




posted by kingstone at 14:43| Comment(0) | TrackBack(0) | コミュニティ作りなど | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月29日

NHK『"学校"のみらい』を見て




また、文字化したページができたら嬉しいですが、とりあえず私が興味深かった点を。

第1部ではいろいろなところでの取り組みが紹介されます。

韓国
代案学校 
キム・ヨンサム大統領(1993-1998)の教育改革(韓国は受験競争が激しい)
1986 女子中学生の自殺
この事件があって代案学校の学費が無料となった。(第1号はガンジー高等学校)
現在は95校(が認可されている、みたいな表現になるのか?)
決められたカリキュラムは2教科だけで、後は子どもが自由に考える。
ムン・ジオン(『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の脚本家。代案学校卒業生)

シン・ナムン学校。決められたカリキュラムは半分。あとは子どもたちが授業を企画(ここは公立学校か?)

日本のフリースクール
子どもが自分たちのやりたいことをいきいきとやっている様子。
お金が課題 出てきたフリースクールは22000円/月

熊本市教育委員会
不登校の子のためにオンライン授業を毎日している
支援が届いていない子 613人
フォローというか居ることを確認して各所と情報共有はしている感じ。これはすごい。というのも、不登校になり、何のフォローもせず、教育からも福祉からも見えなくなっていた例を知っているので。この努力は素晴らしいと思う。

しかし担当の方が「全然サポートもないし身につけたほうがいいよっていうものすらない。まあある意味無法地帯」とおっしゃってたのには、微妙に不登校、不登校支援をしているところをネガティブに考え、「今までの学校」に復帰することが善という価値観を感じてしまったのはうがちすぎだろうか。


日本全国で言えば30万人中11万人が支援を受けていない。(これは引きこもっていて、どこにも出て行っていない、ということなのかな?)

フランス
30年ほど前から支援施設。国家資格「エデュケーター」
子ども15人に5人のエデュケーターがつく。

 ということは3対1だから日本の特別支援学校の法定数と同じ。あと大規模校なら運用で2対1くらいにしているところが多い。なお小規模校なら1対1などというところもある。

「アトリエスコレール」というのが出てきたが、これはその学校(エデュケーターの居る場)の名前だろう
学校を月2日以上休むと支援が開始される。

撮影中、3週間前にそこに来はじめたハムザ君、しきろうとして誰かに何か言われると興奮して出て行く(悪口を言われた、と思った)。1人のエデュケーターがすぐに追いかけ、対話をし、落ち着かせて戻ってきていた。

フランスの格言「教育は器を水で満たすことではなく、火をつけることなのだ」

山形 天童中部小学校
一斉授業を8割にし、子どもが先生になったり、自分で授業を企画したり。
(メイクの授業をしてる子もいる)
子どもが自分自身で学ぶための自由な時間

しかし教諭は、迷いながらやっている(たぶん、ずっと迷いながらやっていくのが大切なんだろうな、と思うのだけど・・・)

気がつけば不登校の子はいなくなっていた

っていうのは、大事なところだろうな。別に「不登校を無くそう」と思っていたわけではなく、いきいきと学べる・活動できる学校を作ろうとしたらこうなってた、と。
ーーーーーー
第2部

OECD が最近だしているキーワード

エージェンシー「自ら考えて社会を変革していく力」ということなんだそう。

けど、そんな意味、英和辞典を見ても出てこないけれど。近いところでは「作用」くらいか。
私なんかがよく聞くものだと

the Central Intelligence Agency(米国)中央情報局(〘略〙 CIA)

で、SPY✕FAMILY の黄昏みたいな人は確かエージェントだし。

Chrome  で「エージェンシー 文部科学省」で検索しAIにまとめてもらうと

文部科学省は、エージェンシーを「自ら考え、主体的に行動して、責任をもって社会変革を実現していく姿勢・意欲」と説明しています。
エージェンシーは、OECDの「Education 2030プロジェクト」において重要なキーワードです。OECDは、エージェンシーを「変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力」と定義しています。
エージェンシーは、日本の新学習指導要領で示されている主体性にも近い概念ですが、より広い意味を含んでいます。エージェンシーは、主体性の概念に加えて、自らの価値観や目的意識、あるいは、周囲との相互作用を前提とすることを加えた考え方です。
文部科学省は、OECDと協力して「日本・OECD共同イニシアチブ・プロジェクト『新たな教育モデル2030』」を実施しています。

ってことだそうです。


矢野和彦(文部科学省・初等中等教育局長)
この場(たぶん、批判される)に出てきて頂けたことは多としたい。
おっしゃったこと。

◯誰もが安心して学べる学校をどう作っていくか

◯個別最適な学び

◯協働的な学び


個別最適な学びについては、第一部に出てきた例や二部の創英の例を見ればもう答えは出ているのじゃないかな。
一斉授業の部分を減らし(このあたりの割合はお子さんにもよると思う。一斉授業や知識詰め込みが合う子もいるだろうから)、子どもが自由に自分のやりたい学びをする。
もちろんそのためには予算の裏付けが必要なわけだが。

だから、矢野さんにお願いしたいのは、財務省と交渉して予算を獲得して頂くことか。

しかし、「こういう取り組みが広がってきた」とおっしゃったら生駒さんから「そうは思えない」と突っ込まれて「令和3年から始めたばかりでまだ・・・」と前言を翻しはったのは面白かった。(別に翻しはったわけではないかも。0から0.001になっても広がってきているわけだから)

そういうやりとりがあったという意味で、この番組は意義があったかな。

あと、この番組ではいっさい取り上げられなかったけれど、特別支援学校でも「個別最適な学び」ができ、「安心した学び」ができる場を作って頂きたい。特別支援学校でも不登校はあるし、通常校では少なくなってきてると思うけれど、「無理やり連れて行く」みたいなことはされがちなので。

また「協働的な学び」は、私のように自閉スペクトラム症のお子さんと関わってきた者には、短絡的に考えるとまずいと思います。長期的には協働するとしても)

あと「(先進的な取り組みを)邪魔しないようにしないといけないな」とおっしゃったのには、ブンブンうなづく。


生駒知里(保護者/多様な学びプロジェクト代表)

ここに「代表メッセージ」がある。

なるほど、「不登校」に関わっていろんな支援をしているところのポータルサイトという感じかな。

「教育支援センターについて」(視聴者からの意見にもあったように)学校に行けないのに、第二の学校のような雰囲気がある。学校復帰を目的にしている感じ。

とおっしゃっていたのには、そういうところが多いだろうな、と思う。

工藤勇一(横浜創英中学・高等学校校長)
取り組み「世の中ってすてきそうだね」と思ってもらえるように。
一番最初に自己選択させることが必要

天童中央小学校の授業参観に来た先生が言ってたできない理由
「カリキュラムが無い」

・・・だからやるんじゃないのかな。まあ苦手な人がいることは確か。



天童中部小学校の先生の話
全国学力テストで結果が出るけどいいけれど、出ていない。そうなると「教えてないからでしょ」と言われてしまう。

 学力テストをやってもいいのだけど、そして全国平均など出して、その学校がどう位置にあるのかを見るのはいい。それを学校間で優劣をつけるようなものじゃない。課題とかが見つかれば(例えば読み取りの力が足りないなら、そこに力を入れよう、とか)地域の課題として解決していく方法を見つける、また児童・生徒1人について個別に何かの力が落ちていて、そのことで暮らしに不具合があるならそこを解決する手段を見つける。
 そういうことなしに、「学力(知識)が低い」なら「知識を詰め込め」とやっちゃうと勉強に意義が感じられなくなったり、つぶれたりする。

島谷千春(加賀市教育委員会 教育長)
教師へのサポートをしている

荒井英治郎(信州大学 教職支援センター准教授)
子どもを軸に考えていくことが必要


 お子さんの居場所、公立で作って欲しいけれど、現在それが無い。将来はできるかもしれないけれど、今を生きていいる児童・生徒は待っていられない。ならば民間の力を利用したらいいのにな、とは思う。韓国の代案学校みたいに。しかし、そのためにはお金が必要。

(しかし、公は民を下に見ている感じはある・・・)


 あと、最後のほうになんかいろいろ情報があったが、ギブアップ。

 で、日本の「知識重視教育」が全ての点において悪いわけでは無いんだよね。「それ以外を許さない」固さが問題なわけで。しかし天童中部小学校みたいに「それ以外」をやってる例もあるわけだ。「今の枠があってもできることはあるんだよ」というのを教えてもらったのは大きいかな。


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2024年01月28日

映画『カラオケ行こ』




ハーバーランドのOSシネマに見に行きました。

週間映画ランキングでは結構上位なので、上映回数も多いだろうと思ったら、すでに1日2回になっている。

しかも小さな箱。

しかし、行ってみたらぎっしりの満席でした。


なんかめっちゃシュール(語彙が・・・わけがわかんない場合、シュールという言葉しか出てこない)。でも面白かった。

しかし、「一番下手だった者は組長の趣味の入れ墨を入れられるので、ビリを回避するために歌を教えて」という設定ですが、狂児、最初の段階で、他のほとんどの人よりうまくないか?(まわりが下手すぎるのですが・・・)



妻も「面白かったあ」と言ってました。

posted by kingstone at 14:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・記事・番組など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月23日

「「ギフテッド」の教育支援のあり方についての提案」山田倖大他を読む



「ギフテッド」の教育支援のあり方についての提案
 ーある一名の学校歴の分析を元にしてー
山田倖大・岡耕平『信学技報』 IEICE Technical Report, HIP2021-28(2021-09), 37-40


米国等においては「ギフテッド教育」として,古典的には知能指数(IQ)の高さなどを基準に領域非依存的な才能を伸長する教育が考えられてきたが、近年ではこれに加え、領域依存的な才能を伸長する教育や,特異な才能と学習困難とを併せ持つ児童生徒(※)に対する教育も含めて考える方向に変化している。また,才能教育というと個人が過度に強調される場合があるが、例えば国際水準の研究成果も現在は共同研究により生み出されることが多く、学際的な多様な才能が組み合わさることがブレイクスルーにつながることが注目されている。
※ 特異な才能と学習困難とを併せ持つ児童生徒は"2E (Twice-Exceptional)”の児童生徒と言われる。

と書かれているので、米国等の「ギフテッド」教育の後追いをして、ブレイクスルー(たぶん産業界の)をねらっている、と考えられます。

 なお、この論文は本文は全て英語という、私にとってとてもじゃないけど直接は読めないもので、原文を DeepL に翻訳してもらったものを読んで書いてます。(で、また DeepL が変な訳をするところも見つけましたが・・・)

「資料4 岩永座長提出資料」のスライド2によると

多様な才能(gifted & talented)教育(米)
才能教育の最先進国アメリカにおける才能児・者への教育の三類型
早修(acceleration)教育
拡充(enrichment)教育
2E(twice-exceptional)教育

と3つの類型があると。

 「早修」というのは飛び級などでしょう。
 「拡充」というのは、本来のカリキュラム以上の専門的な内容を学ぶ機会を設ける、ということかな。
 「2E」というのは、文部科学省は「特異な才能と学習困難とを併せ持つ児童生徒は"2E (Twice-Exceptional)”の児童生徒と言われる」と書かれているので、周囲の子どもと話が合わなくてとか授業内容が簡単すぎてとかで不登校になっているようなお子さんに対するものかな?と想像します。

 Google Chrome で検索するとAIが以下のようにまとめてくれました。

Twice-Exceptional(2E)とは、「二重に特別」という意味で、ギフテッドと発達障害を併せ持つ人を指します。
2Eの人は、特定の分野では非常に高い能力を持ちますが、他の分野は著しく苦手な傾向があります。2E型の大きな特徴は、ギフテッドの能力の高さよりも、発達障害の側面が目立ちやすい点です。
2Eの人は、才能を伸ばす面と障碍による困難を補う面の両方に、二重に特別な支援を要します。特に発達障害のあるお子さんへの支援の中で、2E教育が注目され始めています。

 この論文はこれらの潮流に対する危機感、そして提案として書かれたように思えます。

 そのために A氏の14歳までの学校歴を見ていき、そこから提案されてます。

 論文から引用しますが、上が原文、下が DeepL の訳です。

Counting from kindergarten at the age of 3, Mr. A was officially enrolled in 11 educational institutions by the age of 14, excluding trial enrollment and homeschooling. He enrolled in an online high school at the age of 12 and graduated at 14.

3歳の幼稚園から数えて、A君は14歳までに、体験入学とホームスクーリングを除いて、11の教育機関に正式に入学した。12歳で通信制高校に入学し、14歳で卒業した。

で、途中、メキシコの学校にも通っておられる。最少なら3つ(幼稚園・小学校・中学校)ですむところが11も通われたのは、なかなかぴったりの教育機関が見つからなかったからですね。

もう、親御さんのご努力に頭が下がります。

 しかし、これらの中で「不登校」になったのは、公立小学校(在籍1年6か月)の時のみとのこと。ぴったりこないから不登校になる、というものでもなく、しかし公立小学校は行けなくなったわけです。これは公立小学校のシステムに問題があると考えたほうがいいのではないかな。他は大丈夫だったのだから。

 これだけ多くのところへ行く必要があったのは(これ、DeepL の訳は変だったので、私が訳の部分は少し変えています。またわかりやすいように改行を入れ箇条書き風にしたのは私です。なんか論文ってページ数の節約のためか、箇条書きさせてくれないのは、私にはすごくわかりにくいので・・・)

The main reasons for this were,
(1) the performance level required by the institution differed significantly from his own performance, and
(2) the institution's policy strongly required Mr. A to conform his behavior (the institution required parents), and that policy did not match his intentions.

主な理由は、
(1)教育機関が要求する成續水準が本人の成績と大きく異なっていたこと、
(2)教育機関の方針に合った行動を、A君に強く要求し(教育機関は親に対して要求し)、その方針が本人の意思と合致しなかったこと

とのこと。しかし、基本的に親御さんはこうされます。

His parents said he found what he was good at by giving them many opportunities to discover talent.

彼の両親は、彼に才能を発見する機会を多く与えることで、彼の得意なことを見つけたという。

 そして、A氏の主な学習方法はインターネット上の多くの学習教材から学ぶ、興味ある大会に参加しそこで高い評価を受ける、などによりモチベーションを高め、高い成績を維持されている。

 それらに基づいて筆者はこう提案されています。

Regarding the system for developing talent, Mr. A used free material accessible on the Internet for learning. He also used the opportunity of public competitions to gain learning opportunities and motivation for learning. In other words, it can be suggested that teaching materials that develop talent already exist in the current situation.

才能を開花させる仕組みについて、A氏はインターネット上の無料教材を使って学んだ。また、公募のコンペティションという機会を利用して、学習機会や学習意欲を獲得していた。つまり、才能を伸ばす教材は、現状でもすでに存在していることが示唆される。

 だから、特異な才能を持った子どもを集めた特別なギフテッド教育といったものは必要無いのでは、という提案だと思います。もちろんこのA氏の場合は「あくまでも一例」であると、筆者も限定はしておられますが。

 なお、私が非常に重要だと思うのは、いろいろな習い事や教育機関に行った時に

At many of the lessons and educational institutions, the instructors suggested that it would be better for Mr. A to go to other institutions, claiming that they could not teach him.

多くの習い事や教育機関では、指導者がA氏には教えられないとして、他の教育機関に行くことを勧めた。

 という部分だと思います。「さあ、ギフテッド教育をするぞ」ってったって、集めて一斉授業をしようとしても、それぞれの子どもがいろんな部分で突出してたら一斉授業で教えようたって教えきれるものではありません。

 A氏の場合は、コンクールやイベントで知り合った研究者と連絡を取り、相談したりアドバイスをもらったりしています。

 つまり、集めてどうこうではなく、ひとりひとりが自分の興味関心に従って、その分野を深く研究している人を探して学ぶ、そういうことを保障する体制が大事で、それしか無いような気がします。公立の小・中学校ではそういうことを許さない体質は広くありそうです。高校は少し違ってきたかな?

 これらについてつい最近話題になったのは、下のニュースのせいでした。


 やっぱり「集めてどうこうしよう」として失敗されたわけですね。

 しかし、この記事で

「当時、様々な専門家の方に来てもらった。『このレベルではなかなか天才とは言えないよ』とか。学術的な基礎知識や理論体系をきちっと踏まえて積み上げていかないと『なかなか研究レベルでは通用しないんだよな』と(指摘もあった)」

とかいう評価・指摘・・・ほっとけよ、と思います。

 何というか、A氏の場合でも、親御さんは「今、ここ」が「(本人にとって)充実して楽しい」環境が作れるように一緒に進んで来られただけでしょう。別に研究者になることだけが良いことでもないし。

 しかし、記事中、実践してこられて「失敗だった」と止められた中村さんも、慶応義塾大学の特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏のコメントも大事なことはおっしゃっていると思います。

 なお、この記事についての感想が Twitter(X)でいっぱい出てきた時に、

「そんなやつ、高専にはいっぱいいる」

というツイートが流れてきて、「このレベルではなかなか天才とは言えないよ」みたいな文脈でネガティブな発言ととらえてムカッときたのですが、声も表情も、はたまたどの発言を受けてのツイートかわからないので、

ポジティブ(普通高校のカリキュラムに乗りにくい子の居場所になっている)
ニュートラル(単なる事実?)

みたいな可能性もあり、何とも言えないか、と思い直しました。

 しかし、A氏の場合でも、親御さんに心の余裕と、経済的な余裕が無ければできないことなわけで・・・

 やはり、公立の学校で、「現行の授業が合わない」「現行の行事が合わない」子どもたちに、いろいろな機会をさぐる自由を与えてくれるシステムが必要なのだろうな、と思いました。

posted by kingstone at 11:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする