※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2022年09月19日

「特別支援学校における保護者参画・協働の現状と課題 ー予防的な取り組みを探るー」



特殊教育学会第60回大会 自主シンポジウム I-4

「特別支援学校における保護者参画・協働の現状と課題 ー予防的な取り組みを探るー」

企画者 岡村章司・井澤信三(兵庫教育大大学院)
司会者 井澤信三(兵庫教育大大学院)
話題提供者 大脇和子(兵庫県立神戸特別支援学校)
      坂入仁和(愛知県立半田特別支援学校)
      井上美保(東京都立八王子西特別支援学校)
指定討論者 渡部匡隆(横浜国立大)

 私、これ、事前動画を見ていて是非とも参加したいと考えていたシンポでした。

 そのため、つくば駅について1時間は余裕を見ておけばいいだろうと計画して神戸を出発したのですが・・・

 それぞれに乗り換えで少しずつタイムロス。特に秋葉原ではつくばエキスプレスにたどりにつくのにすごく時間がかかってしまった。

 つくば駅についたら、駅のすぐ上にホテルがあるはずだったのだが、つくば駅は地下鉄で、駅の上がどこかわからない!!(私は駅ビルの上だと思っていたのですが、駅ビルなんてもものもあるわけはなく・・・)

 荷物を一部置いていくというのに頭が凝り固まっていて、地上に出ると方向もわからず、ホテルを探すのに手間取った。

 等などの失敗で、開始40分、もう質疑応答に入ろうかというところでの参加でした。


 大脇和子先生は現神戸特別支援学校の校長先生だと思うのですが(事前動画では「管理職」としか書かれていなかった)、経歴がめちゃくちゃ面白い。

メーカー勤務 8年
専業主婦   8年
バス介助員  1年
臨時講師   6年
教諭  大阪2年、兵庫7年(計9年)(この間に兵教大に行かれている)
主管教諭(コーディネーター)2年
管理職    4年

 学校関係で言えばバス介助員からの叩き上げ、また民間企業・専業主婦の経験も長い。

 私、大学や大学院からストレートで他の経験なく教師になった方が「世間知らず」とは思わないし、民間経験があるから「世間をよく知っている」「視野が広い」とも限らないと思っています。経歴よりも個別の差のほうが大きいだろうな。

 でもこれだけ多様な経歴をもった方の視点もすごく大事だろうな、とは思います。


 それから、東京都立八王子西特別支援学校の井上美保校長先生。

まず学校の歴史。これは学校ホームページの「沿革」から。

平成31年(2019年)4月 開設準備室設置
令和2年 (2020年)4月 開校
そして準備室設置の段階から井上校長先生が中心になって動いてきておられることがわかります。

 話題提供の資料では、保護者との連携・協働の現状として、

1.外部専門家連携(専門家によるアセスメントに教員と保護者が同席する)
2.教材作成ボランティア

が紹介されていました。

 この2.の「教材作成ボランティア」の例として挙げられていた画像が

・コミュニケーションブック(もちろん個別のものと思われます)
・スケジュールブック(これも個別のものと思われます)

ですので、私自身としては「教材」と言われることにはすごく違和感があるものの、たいへん素晴らしい取り組みだと思いました。

 上の2つにはたくさんの、パウチラミネートされた絵カードや写真カードが必要です。またカードの裏にマジックテープを貼り付けることが必要です。(そういう形式のブックになっていました)

 これらを作るのはそこそこたいへん。

 開校以来「素晴らしい」と感じていた親御さんが、しかし先生方が子どもたちと向き合う時間が減ったり、長時間労働で消耗してたりしないか、と心配され、PTA会長さんからの申し出もあり、「教材作成ボランティア」が発足した、と。

 今、親御さんが学校に訪れるのは、親御さんも忙しくなり、たいへん難しい状態になっていると思います。もちろんコロナ禍でもありますし。また学校で使うものは学校で用意すべきという意見もあるでしょう。

 私は学校で使うものは学校で用意すべき、と考えています(もちろんだからこそ業務の見直しをして不必要な仕事は無くしていくことが大事だと思っていますが)。

 しかし、「教材作成ボランティア」は、過渡期としても素晴らしい取り組みだと思います。

 いや、まずそれ以前に、井上先生が

「個人持ちのコミュニケーションブックやスケジュールが必要だ」と感じていなければ、そもそも学校全体でこういう取り組みがされることはなく、PTA会長さんやその他保護者の方も「個人持ちのコミュニケーションブックやスケジュールが大事だ」と感じていなければ、「教材作成ボランティア」が発足することも無かったでしょう。

 私は25年前にコミュニケーションブックやスケジュールや自立課題学習での取り組みをし、大きな成果をあげ、そして学校全体での取り組みにしようと、学校・学部研修の時間、自主研修の時間にいろいろと実例の動画を含めてお知らせしたけれど、私のクラスだけの実践にとどまってしまった。

 また親御さんに逐一報告していたけれども、親御さんで自分でお子さんのために継続的にコミュニケーションブックやスケジュールを作ってくださるご家庭はついに生まれませんでした。(私が作ったコミュニケーションブックというか、そこで作った画像をずっと使い続けて下さっているご家庭はあります)

 しかし「教材作成ボランティア」で実際に自分で手を動かして作れば、作り方は身につくし、自分の子には必要無いと思っていてもボランティア活動での世間話の中で「えっ、あそこにもこんな良いことが起こったの」ということがわかれば、自分ちでもやってみようと思えたりするのじゃないか。

 私ができなかったことを、井上校長先生は実現されておられる。

 そこで「こういうことが実現できた要因は何でしょうか」と質問させて頂きました。

1.外部専門家連携という事業は東京都がお金をつけて以前からやっていた。その中で学び、(コミュニケーションブックやスケジュールを)必要と思うようになった。

2.学校のコンセプトとして取り入れた。
 ホームページの「校訓」より

校訓「自律自啓」(じりつじけい)」
 自律・・外部からの支配や制御を受けずに、自身の立てた規範に従って行動すること
 自啓・・人から教えを受け、自ら情熱をもって進んで学ぶこと。
 この精神には、児童・生徒が自立と社会参加・貢献に向けて、周囲から様々な支援を受けながら、目標に向かって、意欲的に情熱をもって学ぶ子供たちの姿を意味しています。
教育理念 「わかって動く・考えて動く・責任を果たす」
(校訓ってかっこいいことを書きながら、全然そんなことやっていない、という学校も多いように見受けます。しかし八王子西特別支援学校は「この校訓を実現するためにコミュニケーションブックやスケジュールが必要」と明確に位置づけられているわけだ)

 なお、「態度を軸にした八王子西特別支援学校の教育」のページにはわかりやすい(しかし細かいので全部をぱっと見るのはたいへんかな?)図も載っています。そしてこの図は PDF としてダウンロードもできますね。

3.反対する先生もいなかったわけじゃないが、実際に良い結果が出ることで考えが変わっていかれた。

4.学校で良い結果が出ているので、保護者からの信頼も得ることができた。

と、非常に良い循環で回ってこられたのですね。
なお、その質疑応答でだったか、シンポが終わった時にご挨拶した時だったか、に「事故報告が激減した(ひょっとしたら 0 になった、だったかもしれない)とも教えて頂けました。

 すごい・・・
 で、思ったのですが、ひょっとしたらこれ、PBS でうまくいった例と言ってもいいのじゃないか・・・
1.管理職のリーダーシップのもとでの校訓から始まる強化(とはどこにも出てこないけれど、「良きことが起こる」「喜ぶ」の循環)での指導システム。
 そしてたぶん、職員も保護者もみんな強化されてる。

 すごいなあ・・・

 でもってやっぱり「管理職が大事」という話でもあるな・・・

posted by kingstone at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「行動上の問題を示す重度知的障害と自閉症スペクトラム症のある生徒への自己欲求を充足する支援の検討」小林愛・下山真衣



 先日の特殊教育学会60回大会でのポスター発表 P5-8

「行動上の問題を示す重度知的障害と自閉症スペクトラム症のある生徒への自己欲求を充足する支援の検討」小林愛・下山真衣

この実践研究は

行動上の問題については、 PBS の

1.個人を中心とした支援計画の作成
2.機能的アセスメントの利用
3.正の強化による支援・指導方略の使用
4.包括的な支援の実施
5.環境変数の操作
6.社会的に妥当であること
7.日常への般化
8組織レベルでの介入

(Anderson & Freeman, 2000;Carr & Sidener,2002) を行うことが有効であると考えられている。

ということで

本研究では、重度知的障害と自閉スペクトラム症が伴う児童生徒の自己欲求を充足するという観点から正の強化による支援方略を立案し、実施した行動上の問題に対する包括的な支援について事例検討を行う。

という問題意識・目的で行われたということです。


対象
高等部男子生徒。
知的障害も重度。頭部を片手で何度も叩いたり、異食をしたりする。
(そしてその後に「教室や集会で頭部を叩くことが多く、別室にひとりでいるときはほとんど叩かない」という記述が出てくる。もちろん筆者は気づいておられただろうが、それ以前の小学部・中学部の先生方はここから何かを気づき、適切な対応を考えられなかったのだろうか?)

実施期間はほぼ1年

アセスメントによりわかったこと
引き継ぎ資料
行動観察
保護者からの聚き取り
実際に支援した際の姿
これらから実態把握をし、加えて
N C プログラム
感覚プロファイル
による評価も行った。

 感覚プロファイルは低登録と感覚過敏が非常に高く、感覚探究と感覚回避も高いという結果であった。異食は埃や砂など身の回りで見つけた細かいものを食べる、教室で騒音がある、何もすることがなかった場合や作業の見通しや、やり方が分からなかった場合などに頭部を叩くことが多かった。

そして

教員の手を引っ張り自分の肩を叩かせることも頓繁であった。

 あっ、ここ質問するの忘れてたな。コミュニケーション行動がある、ということですもんね。「肩を叩かせる」というのはどんな感じなのか知りたかったな。

 肩トントンなのか、「痛い!」というレベルなのか・・・

 私の知っている例で、ほっぺたを平手打ちしてもらわないと食べられない、という高等部の生徒がいました。これは小さな頃、誰かに叩かれて食べさせられていたために同一性保持を起こしてしまっている例と思われました。

 そんな悲しい話なのか、あるいは注意喚起された後良きことが起こった体験を再現しようとしていただけなのか。

 まあそれは置いておいて、このアセスメント結果でもう何をすればいいかがいくつも浮かんできますよね。それはつまり小林さんがアセスメントで何を明らかにすればいいかちゃんと頭の中で整理されているからですが。(こういう書き方は上から目線?)


支援計画、介入、結果は簡単に(数字は筆者のものから改変)結果は【】で

I 口腔感覚の保証と余暇
1.(異食に対して)口腔感覚の保証として飲み込む危険性の無い複数の素材を用意し、本人の気に入るものを使わせてあげ、あきたらまた他の物に更新。
(これなんか、「物を口に入れるなんて!」と反対する意見は出なかったかな)

2.本人の好きな楽器や音楽を楽しめるようにした。

【教室や作業の合間の過ごし方として定着】

II 作業学習

3.作業学習で作業が本人にわかりやすいようにした。

4.作業の1セットの量がわかりやすいようにした。

5.作業が数セット終わった時にお茶と余暇グッズを提供したりした。

【賞賛の声かけをすると笑顔を見せるようになった。その後の活動再開もスムーズになった(これは質問して教えて頂いたのですが)できる作業のバリエーションが増えた】

III コミュニケーションと嫌悪事象に対する対応

6.「トイレ」「飲む」などの要求の絵カードコミュニケーションができるようにした。

7.「個別のスケジュール」に使った絵カードで教師から働きかけたりした。

8.本人が興味をもった物を絵カードにして余暇グッズに追加した。(つまり要求できたり、教師が「次はこれだよ」と知らせることができるようにしたってことだろうな)

【要求カードを手渡しして伝えるようになった。またカードを使って周りの教師に関わろうとするようになった】

9.教室や集会で嫌になった時、まずはそのままにして見守った。(その後、かな?)近くに休憩場所を設定し、休憩の絵カードを用意し、その場を離れようとしたり、した時に
【本人が休憩カードを選ぶ姿も見えるようになった。また行動の切り替えがよくなった】

 で、グラフとかは無かったのですが、「頭叩きは減りました?」とお聞きすると、激減したとのことでした。まだ0ではないですが、とのこと。

 素晴らしい総合的な取り組みだと思います。1年で大きく変化されました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
 さて、ここからはまったく書かれていないことです。

 しかし、それぞれの介入と結果を見てみれば、

「ってことは小学部・中学部ではこういう取り組みは無かったってことだよなあ。ほんの少しはやってみたことはあったかもしれないけれど、うまくいかなくてあきらめたか、うまくいっても引き継ぎされなかったことだよなあ」

と、私は勝手に推測してしまいます。

それでいいのか?いいはずないよね。

ある意味、小林さんはそういう現状に抗おうとしてはる方だと思います。しかし「学校」「教育委員会」「文部科学省」はそういう現状は非常に良くない、ということはわかっておられるのだろうか。

そして、教育委員会や文部科学省は、現在の「特別支援教育免許」をもっている専門的な先生方がそういう現状をよしとしている、あるいは変えようがないという現在の姿をおかしいと感じて、じゃあ「免許」云々ではなく、どういうシステムを取り入れたらいいのか、ということを考えてほしいなあ。


posted by kingstone at 19:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「デトロイト美術館の奇跡」原田マハ著





 デトロイト市の 2013年の状況は(引用は Wikipedia から

2013年7月18日に財政破綻の声明を発表し、ミシガン州の連邦地方裁判所に連邦倒産法第9章適用を申請した。負債総額は180億ドル(約1兆8000億円)を超えるとみられ、財政破綻した自治体の負債総額で2013年当時において全米一となった。

 破綻によって市職員の年金が大幅に減らされる危機があり、もちろん他の債務も大幅にある。

 また市立デトロイト美術館にはたくさんの高額のアートがあるのでそれを売っぱらってお金を作れば債務支払の足しになる。だから売っぱらえ。

 しかし、美術館の作品は市民の宝だ・・・そして作品があるからこそ、市民だけでなく全米から観光客も来てくれるのじゃないか。

 といういろいろな立場があって混乱した時に債務管理の立場の人が両者が納得できる

「デトロイト市の退職職員を年金削減から救済し、市の経済的・文化的活力を再興するための資金調達・支給基金計画」

を作り、多くの財団からの寄付を獲得でき、作品も売ることなく、美術館は独立行政法人となり存続できた。

 その実話を元に原田マハさんが書かれたフィクション。

 新幹線の中で読んでいて、ボロボロ泣き、鼻水をふきふきという状態になりました。今の時世、周囲の方にものすごく警戒されたのではなかろうか・・・

 なお、2013年当時のデトロイト市は Wikipedia によると

市の発表している統計では子供の6割が貧困生活を強いられており、市民の半分が読み書きもできず、市内の住宅の3分の1が廃墟又は空き部屋となっており、市民の失業率は18パーセントに達する。また、警官が通報を受けて現場に到着する平均時間は、人手不足のために58分かかる。

という状態であったと。それが2018年には

それから数年後、2018年現在のデトロイトの失業率は7パーセント台にまで回復するなど急激に景気が回復しており、また、全米各地から労働人口が流入している。スラム化したダウンタウンには活気が戻り、空洞化したオフィスビルには人が出入りしてオフィス占有率は90パーセント台まで回復し、激減した市域人口も下げ止まりした。下落した地価を逆手に取って、安い賃金を武器に積極的なスタートアップ企業やエンターテイメント産業を誘致した結果である。
となったとのこと。

たくさんの、いろいろな方の努力があったのだろうな。













posted by kingstone at 14:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・記事・番組など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年09月18日のつぶやき










































































































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2022年09月18日

2022年09月17日のつぶやき






























































































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