特殊教育学会第60回大会 自主シンポジウム I-4
「特別支援学校における保護者参画・協働の現状と課題 ー予防的な取り組みを探るー」
企画者 岡村章司・井澤信三(兵庫教育大大学院)
司会者 井澤信三(兵庫教育大大学院)
話題提供者 大脇和子(兵庫県立神戸特別支援学校)
坂入仁和(愛知県立半田特別支援学校)
井上美保(東京都立八王子西特別支援学校)
指定討論者 渡部匡隆(横浜国立大)
司会者 井澤信三(兵庫教育大大学院)
話題提供者 大脇和子(兵庫県立神戸特別支援学校)
坂入仁和(愛知県立半田特別支援学校)
井上美保(東京都立八王子西特別支援学校)
指定討論者 渡部匡隆(横浜国立大)
私、これ、事前動画を見ていて是非とも参加したいと考えていたシンポでした。
そのため、つくば駅について1時間は余裕を見ておけばいいだろうと計画して神戸を出発したのですが・・・
それぞれに乗り換えで少しずつタイムロス。特に秋葉原ではつくばエキスプレスにたどりにつくのにすごく時間がかかってしまった。
つくば駅についたら、駅のすぐ上にホテルがあるはずだったのだが、つくば駅は地下鉄で、駅の上がどこかわからない!!(私は駅ビルの上だと思っていたのですが、駅ビルなんてもものもあるわけはなく・・・)
荷物を一部置いていくというのに頭が凝り固まっていて、地上に出ると方向もわからず、ホテルを探すのに手間取った。
等などの失敗で、開始40分、もう質疑応答に入ろうかというところでの参加でした。
大脇和子先生は現神戸特別支援学校の校長先生だと思うのですが(事前動画では「管理職」としか書かれていなかった)、経歴がめちゃくちゃ面白い。
メーカー勤務 8年
専業主婦 8年
バス介助員 1年
臨時講師 6年
教諭 大阪2年、兵庫7年(計9年)(この間に兵教大に行かれている)
主管教諭(コーディネーター)2年
管理職 4年
専業主婦 8年
バス介助員 1年
臨時講師 6年
教諭 大阪2年、兵庫7年(計9年)(この間に兵教大に行かれている)
主管教諭(コーディネーター)2年
管理職 4年
学校関係で言えばバス介助員からの叩き上げ、また民間企業・専業主婦の経験も長い。
私、大学や大学院からストレートで他の経験なく教師になった方が「世間知らず」とは思わないし、民間経験があるから「世間をよく知っている」「視野が広い」とも限らないと思っています。経歴よりも個別の差のほうが大きいだろうな。
でもこれだけ多様な経歴をもった方の視点もすごく大事だろうな、とは思います。
それから、東京都立八王子西特別支援学校の井上美保校長先生。
まず学校の歴史。これは学校ホームページの「沿革」から。
平成31年(2019年)4月 開設準備室設置
令和2年 (2020年)4月 開校
令和2年 (2020年)4月 開校
そして準備室設置の段階から井上校長先生が中心になって動いてきておられることがわかります。
話題提供の資料では、保護者との連携・協働の現状として、
1.外部専門家連携(専門家によるアセスメントに教員と保護者が同席する)
2.教材作成ボランティア
2.教材作成ボランティア
が紹介されていました。
この2.の「教材作成ボランティア」の例として挙げられていた画像が
・コミュニケーションブック(もちろん個別のものと思われます)
・スケジュールブック(これも個別のものと思われます)
・スケジュールブック(これも個別のものと思われます)
ですので、私自身としては「教材」と言われることにはすごく違和感があるものの、たいへん素晴らしい取り組みだと思いました。
上の2つにはたくさんの、パウチラミネートされた絵カードや写真カードが必要です。またカードの裏にマジックテープを貼り付けることが必要です。(そういう形式のブックになっていました)
これらを作るのはそこそこたいへん。
開校以来「素晴らしい」と感じていた親御さんが、しかし先生方が子どもたちと向き合う時間が減ったり、長時間労働で消耗してたりしないか、と心配され、PTA会長さんからの申し出もあり、「教材作成ボランティア」が発足した、と。
今、親御さんが学校に訪れるのは、親御さんも忙しくなり、たいへん難しい状態になっていると思います。もちろんコロナ禍でもありますし。また学校で使うものは学校で用意すべきという意見もあるでしょう。
私は学校で使うものは学校で用意すべき、と考えています(もちろんだからこそ業務の見直しをして不必要な仕事は無くしていくことが大事だと思っていますが)。
しかし、「教材作成ボランティア」は、過渡期としても素晴らしい取り組みだと思います。
いや、まずそれ以前に、井上先生が
「個人持ちのコミュニケーションブックやスケジュールが必要だ」と感じていなければ、そもそも学校全体でこういう取り組みがされることはなく、PTA会長さんやその他保護者の方も「個人持ちのコミュニケーションブックやスケジュールが大事だ」と感じていなければ、「教材作成ボランティア」が発足することも無かったでしょう。
私は25年前にコミュニケーションブックやスケジュールや自立課題学習での取り組みをし、大きな成果をあげ、そして学校全体での取り組みにしようと、学校・学部研修の時間、自主研修の時間にいろいろと実例の動画を含めてお知らせしたけれど、私のクラスだけの実践にとどまってしまった。
また親御さんに逐一報告していたけれども、親御さんで自分でお子さんのために継続的にコミュニケーションブックやスケジュールを作ってくださるご家庭はついに生まれませんでした。(私が作ったコミュニケーションブックというか、そこで作った画像をずっと使い続けて下さっているご家庭はあります)
しかし「教材作成ボランティア」で実際に自分で手を動かして作れば、作り方は身につくし、自分の子には必要無いと思っていてもボランティア活動での世間話の中で「えっ、あそこにもこんな良いことが起こったの」ということがわかれば、自分ちでもやってみようと思えたりするのじゃないか。
私ができなかったことを、井上校長先生は実現されておられる。
そこで「こういうことが実現できた要因は何でしょうか」と質問させて頂きました。
1.外部専門家連携という事業は東京都がお金をつけて以前からやっていた。その中で学び、(コミュニケーションブックやスケジュールを)必要と思うようになった。
2.学校のコンセプトとして取り入れた。
校訓「自律自啓」(じりつじけい)」 自律・・外部からの支配や制御を受けずに、自身の立てた規範に従って行動すること 自啓・・人から教えを受け、自ら情熱をもって進んで学ぶこと。 この精神には、児童・生徒が自立と社会参加・貢献に向けて、周囲から様々な支援を受けながら、目標に向かって、意欲的に情熱をもって学ぶ子供たちの姿を意味しています。 教育理念 「わかって動く・考えて動く・責任を果たす」 |
(校訓ってかっこいいことを書きながら、全然そんなことやっていない、という学校も多いように見受けます。しかし八王子西特別支援学校は「この校訓を実現するためにコミュニケーションブックやスケジュールが必要」と明確に位置づけられているわけだ)
なお、「態度を軸にした八王子西特別支援学校の教育」のページにはわかりやすい(しかし細かいので全部をぱっと見るのはたいへんかな?)図も載っています。そしてこの図は PDF としてダウンロードもできますね。
3.反対する先生もいなかったわけじゃないが、実際に良い結果が出ることで考えが変わっていかれた。
4.学校で良い結果が出ているので、保護者からの信頼も得ることができた。
と、非常に良い循環で回ってこられたのですね。
なお、その質疑応答でだったか、シンポが終わった時にご挨拶した時だったか、に「事故報告が激減した(ひょっとしたら 0 になった、だったかもしれない)とも教えて頂けました。
すごい・・・
で、思ったのですが、ひょっとしたらこれ、PBS でうまくいった例と言ってもいいのじゃないか・・・
1.管理職のリーダーシップのもとでの校訓から始まる強化(とはどこにも出てこないけれど、「良きことが起こる」「喜ぶ」の循環)での指導システム。
そしてたぶん、職員も保護者もみんな強化されてる。
すごいなあ・・・
でもってやっぱり「管理職が大事」という話でもあるな・・・