よく「出羽守」という、外国に行って、あることについて深く調べたわけでもないのに「○○国では〜〜」としたり顔してその国の一般的な姿として論評する人を揶揄する言葉があります。
それに対してこの本は、藻谷さんが、短期間どころか、最近の言葉で言えば弾丸ツアーでいろいろな国へ行き、その見た目の印象で論評された記事を集めたものです。
もう「出羽守」であること、あるいはそれ以下の体験であっても直接見聞きし、体験することが大事、という考え方にたってのことだろうな。
この本では、あまり人の行かないような国での見聞を集めてはります。
東ティモール、旧ユーゴ、アルバニア、アンドラ、レバノン(外務省から渡航について、十分注意、不要不急の渡航中止、渡航中止勧告の3地域全てに指定されている)、ベイルートなどに行ってはる。
モンテネグロやアンドラなどは、小さくて、山地で生産力が低く、交通の要衝でもないので周辺の国が占領するメリットが無かったから生残ったと。なるほどです。
そういう意味では(それほど小さくはないけど)生産力の高い(雨もよく降って温暖だし)日本なんて、島国でなかったら攻められまくってるだろうな。
また藻谷さんと言えば、地域の経済の活性化関連のお仕事もされているから、「外国の大資本のお店は進出してきているけれど、そこで消費すると現地にお金があまり落ちない」ということを、いろんなところで心配されている。
これは日本国内でも、地元のお店にお金が落ちず、大資本(国内外いろいろ混じって)にお金を吸い上げられ、結果的に衰退していく、という形になっているだろうな。今のリモートワークの風潮が少しは現状を変えるだろうか?
また、一見うるおっているように見える国でも ODA だよりであったりとかする場合もあるので、それも心配されている。
あと(現在までのところ)階層分化も小さく、比較的安全で、輸出だって実はまだまだ結構ある日本の良さは強調しておられた。
まあ藻谷さんは、プライマリーバランス赤字はいかんというご意見は強調されている。
どうなんかなあ・・・放置じゃなく「観察しつつ介入しつつ」なら、別にいいような気もするのだけど。
しかし、この本の時点と今のロシアが戦争を始めた状況はずいぶん違ったものになっているとは思う。
例えばあとがきに
「他国に進出するのに、いまどき軍事介入するなど下の下であり、個人や企業としてお金を投資し利益を回収した方がよほどハイパフォーマンスだ」
と書かれていて、たぶん世界中の大多数がそう思っていただろうし、今でも真理だろうけど、ロシアがウクライナに戦争をしかける時代だしなあ。
この本、2019年4月25日に第一刷が出ています。