で、「北欧の福祉が素晴らしい」という価値観ではなく、とにかく体験し、感じようとされています。
最初は「老人の家」のボランティアとして、またホームケアのスタッフをしたりとかいろいろされています。
それ以外にも、ご自分のお子さん(乳児の時からかな)を連れていっての研究もされ、あちらの保育園を利用し、サービス利用者としても体験されています。
で、人々の暮らしや価値観から理解していこうとされているので、その価値観や経済状態の違いから、制度をお互いに移入してもうまくいくってものじゃない、ということは強調してはります。
確かに、描かれているフィンランド人の高齢者(最近は難民とかも増えてきているので、ちょっと変わってきてるかも)は、みなさん自立心が旺盛で、例えばたくさんの島があるのだけど、島に夫婦二人だけで住んでいて、どちらかが亡くなられても1人暮らしを続けるとかが多い。
ムーミンの原作者、トーベ・ヤンソンさんも夫と二人きりで島に住んでおられたと。
しかし、ある夏、漁の網を上げるのが突然億劫になり、そして段が必要になり、仕事をする意欲はあるのに屋根に登る気がしなくなり、そして海が怖くなったそう。
で、どうやら島を離れたよう。だんだん年老いて、できていたはずのことができなくなっていく感じがよくわかる。
でもきっと私などが思っている以上に、「そこまで頑張らなくても」みたいなところまで頑張ってはったんやろな。もちろん意識はせずに。
またケアする人たちも、人里離れたところに一人で住んではる高齢者を、心配しつつもリスペクトしてはる感じがよくわかります。(「困ったもんだ」とは感じて、考えておられない)
著者の関心あるキーワードとしては「自立」「孤立」「鬱」があると。
ホームサービスの仲間のサガルさんは、ある高齢者について、クリスマスに子どもたちが一人も来なかった、と憤慨してはる。実はサガルさんはソマリア人で、親戚とのつきあいが濃い。
サガルさんは、ソマリアからの難民で、フィンランドに来て、学び、資格をとった方。つまりフィンランドはそういうふうに難民を受け入れてはるんや。
で、「時間がない」「時間がない」とか言いながらも、サガルさんは前日にその高齢者さん宅で2時間もお茶をして、話をしてたと。
また別の高齢者の時も、ホームサービスとしては食事をとってもらうところでおしまいなのだけど、その後のコーヒーを誘われ「断ると悲しい思いをすると思う」という理由でつきあってはる。
なんか、ほのぼのしてて、結構いい意味で「ええかげん」なところもあるんだな。
あと、ヘルパーさんが花束を持って行ったり、利用者さんから贈り物をもらったり、と日本だったらありえない(?)様子も書かれています。
(でも、基本的にはホームサービス(日本で言えば居宅介護か)はすごく短い時間で終わりだし、そうでないと回れないんだけど)
でももともと家族、親族への「家族で見守らんかい」みたいな圧力はほとんど無く、子どもは出ていくのが当たり前。でも、もちろん家族が支援している場合もあり、そのための制度もある。
一応、どんな制度があるか概観しておくと
※1ユーロは、今日121.60円。120円くらいでだいたいの金額で計算してみる。
1.ホームケア
訪問看護とホームサービスからなる、高齢者、障がい者、病気の人が対象で、自宅での生活を支える。定期利用 者の場合料金は月額で、所得(受給年金額一週ごとの訪問日数によって算定される。
2.支援サービス
@食事サービス:サービス付き住宅エリアの食堂で昼食をとることができる。また。自宅への給食配送サービスもある。いずれも1食 7.5 ユーロ(900円)
A輸送サービス:デイサービス利用者のた青のり合いタクシー。1回3.3ユーロ(400円)
B安全サービス:警報付きドアと安全電話(文字盤の無い腕時計型。文字盤の部分がスイッチになってて、そこを押すと待機している人と話ができる)からなる。いずれも月額24ユーロ(2900円)
Cサウナ・洗濯サービス :いずれも一回につき4.5ユーロ(540円)
3.親族介護者支援(2005年から)
家族・親族を会後している人に対する金銭的支援、レスパイトケアの提供、コーチングなど。「親族」となっているが「近所の人」でも良い。また他の仕事をしていても良い。(フルタイムで働いている人もいる)
親族会後者はえの給付状況は円グラフが出てる。356ユーロ(43000円)が65%くらい。474ユーロ(57000円)が25%くらい。590ユーロ(71000円)が10%くらい。これって月かな?
で、お金もだけどレスパイトがあるのがいいな。そのさいは例えば2時間ホームサービスの人が来て、その間一人で外出できるとかいうふうに使う。
4.デイサービス
@サービスハウス:後述のサービス付住宅エリアの共有施設。訪問介護のオフィス、安全サービスのオフィスの他にランチを提供する食堂がある。年中行事誕生日会などのイベントもここで開催されている。
A認知症対応型デイサービス「お日様」 : 認知症患者に特化したデイサービス。
B自由訪問型デイサービス「老人の家」 : 近隣の住民が自由に訪問するタイプの施設。ただし、契約型のサービスを利用する人もいる。
5.サービス付き住宅とグループ住宅
@グループ住宅:群島町にはアパートで共同生活を送るタイプのグループホームが3か所ある。一般的なアパートの一室で、四人の居住者がそれぞれ個室を持ち、居間やキッチンを共有する。日中は一人のケアワーカーが常駐している。
Aサービス付き住宅:群島町は五つの旧自治体が合併しているが、それぞれの旧自治体にサービスハウスとサービス付き住宅のコンプレックスがある。
Bサービス購入 :NPOや私企業が運営するグループホームやサービス付き住宅のサービスを町が購入している。
6.施設介護
旧群島町には町営の長期介護施設があり、インターバルケア、認知症ケア、長療養型介護を提供している。
以上が概略。
最近の流れとしては、新自由主義的なものが徐々に入ってきてるって。
2019年4月の選挙の結果から、もっと流れは強まってるかな。
で、業務のIT化もはかられているのだけど、そのソフトがくそでまともにシフトが組めないし、また全員にスマホを持たせ二次元コードでサービスの場への入室、退室も管理できるはずが事務処理が増えたって。なんでやねん?
ただ、時代の流れもだし、都市部とはかなり違うよ、みたいなことも書かれてます。都市部には上記のような雰囲気は少ないみたい。