「調べる」論 木村俊介著
「情報の流通が、病気への誤解を深める場合もある」
本田美和子
国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター勤務
内科医
「マスコミの発言者のほとんどー特に教育関係ーは実際のHIVの患者さんの生活を知らないままではないだろうか、とは、最近よく感じます」
これね、私の仕事の分野で言うと、発達障害の人の(発達障害は障害であって病気ではないけど)生活、そして小さい頃から大人までを見通しをもって接してはる人、がどのくらいいるだろう・・・というのはいつも思う。
私自身、小学校教師や小学部教師であった時代のほとんどはわからないままで過ごしていたもんな。で、学校の中だけのことしか考えてないし、わかっていなかった。しかしそれでは学校の中で行う教育も、何していいかわからなかったり、トンチンカンなこと(いつまでたっても1ケタのたし算・引き算のプリントをやり続けたりね・・・。「楽しみ」でできてる子ならいいけど、もっともっとやらなきゃなんないこといっぱいあるんだけど・・・)
そして家でそのお子さんがどうなっているか、また大人になった時、親御さんや周囲との関係が、どうやってるとどうなるのか。
本に書いてあるのと似た内容で、HPの記事になってる部分をこちらにコピペ。
「HIVのお薬は非常に高価なので、患者さんがちゃんと治療をやろうと思ってくださると、1ヶ月にだいたい20万円ぐらいの治療費がかかるんです。国民保険を持っていらっしゃれば3割負担の6万円、さらに自治体の補助制度を使うと、ごく平均的な収入の20代、30代の女性患者さんで5,000円〜1万円ぐらいの自己負担になります。ですから、感染してしまっている人で、お金がないから病院に行けないと思っている人がもしいたら、素晴らしい制度があってお金の心配はしなくていいから、まず病院に来てください、とお伝えしたいと思います。その一方で、1人の患者さんの治療費が年間240万円だとすると、40年間治療すると約1億円のお金が私たちの社会から使われていかざるを得ない。つまり、HIVに感染していない人が私には関係ない病気だと思っていても、現実問題として、自分たちが払っている保険料と税金がHIVの治療のためにすでに使われているんです。」
なお、本に
「毎年、新しい感染者は1300人以上増えているので・・・」
と書いてある。
年間1人240万円として、年間31億2000万円以上ずつ増えて行くわけだ。
この観点から考えたことはなかったな。
なってしまったら即医療にかかるのは当然として、予防すればこのお金が少なくてすむ。
「初診の目的は「話を聞き、相談に乗ること」
私の役割は、HIVの患者さんたちに対して治療の相談に乗り、健康維持のお手伝いをすること。「人間は、時間が経てば環境に適応できるものなのだな」と患者さんたちが精神的に回復する力を持っていることには、いつも素晴らしいなと思わされます。
ただ、最初は誰でもHIVだと告げられたことにショックを受けていますから、じわりじわりと話さねばなりません。最初には、患者さんが最も聞きたいであろうことの一つである「今すぐに死んでしまうわけではありません」という要点を話すことが多いですね。
同時に「しかし治りません」とも伝えなければならない。あとは、たいていの初診は「恋人や家族に話せるか」など、生活の相談になります。この病気に関しては、告白や相談のできる味方がいた方がいいということは、統計的な数字にもはっきり出ていますので。
「健康状態を維持するために、毎月、血液検査をしに通院してもらえますか」
「はじめは原則的に月に一回の通院になりますが、免疫の数値が良ければ三ケ月に一回の通院で構いません。仕事も続けられますし、手術の必要もありません」
今後の予定が気になるだろうからそういうことも伝えて「長丁場の病気になるので頑張って行きましょう」と話して、初診は終わります。これから長い付き合いになるのだから、まず、患者さんの話をきちんと聞くことを大切にしています。こういったHIV治療における内科医のスタンスは、老年医療に近いものがあるんです。長期治療が必要であり、完治するわけではないという前提で、患者さんが調子の悪いところを医師に相談するのですから。
子どもの病気の場合は、親からすれば元気でいて当たり前みたいに思うところもありかちだからこそ、医師には100パーセントの勝利を求められがちなものです。そのような小児治療に比べたら「まあ、年齢的なものもあるかな」と病気に対する諦観や納得が前提になっている老年医療は、非常にHIVの患者さんたちへの診療に通じるところがある。アメリカの病院で働いていた時に老年医療を専門にしていた私には、合っている仕事なのかもしれません。
こういう種類の医療においては「いやなことばかり言われるから、もう病院になんて行きたくないな」と通院を止められたら、治療のチャンス自体が失われてしまいます。それで「あなたの健康を守るためのお手伝いをいたします」という意味のことを患者さんにははっきり伝えて、ともかく相談に乗っていくんですね。
発達障害で言うと「治りません」あるいは「治るという概念は適切ではありません」、しかし「環境を整えることによって、結構楽しく暮らせるんですよ」と伝えるあたりかな。
あと、相談支援で言えば、幼児から成人までずっとの長丁場になる場合もある。
でもってお子さんに関することだから・・・それこそ親御さんとしては100%の勝利(?)を求めはるのか・・・
でもって「いやなことばかり言われるから・・・」というの、私は「だからこうしたら、こう考えたら楽になりまっせ」も伝えるのだけど、それは親御さんにとって「いやなこと」である場合がままあるのね。
それとたぶんHIVと発達障害が大きく違うのは、私は「診断名を味方にしましょう」と言うのだけど、周囲に伝える、本人に告知する、本人が周囲に伝える、などによって「だからこうしたら楽になるよ」ということがいろいろできること。
この部分はHIVの方が周囲に伝えるには「重い」部分になるかな。
またこれはHIVも発達障害も同じことになるかもしれないけど、
「診断名は相手を排除するためにあるのではありません。適切な対応を探すためにあるのです」
も言うな。