でも、「子どもたちが来たいから来る」「来たくないのなら来なくていい」という気持ちは強く持っています。だからこそ、子どもたちが「来たい」と思えるように環境を整えるわけですし。
先日、どうも学校その他のいろんなイベントで疲れ切ってしまったお子さんが、ソワに来ている時に、外に飛び出す、ということが起こりました。(注・というようなことは全てが終わった後、日時をかけてだんだんわかりました。その時点では私を含めてソワのみんなも何も知りませんでした)その時の私とそのお子さんの対話。外で溝のふちに座りながらのやりとりです。
kingstone「なんかつらいことあった?」(字と音声で尋ねた)
子 「学校できもいと言われた」
kingstone「友達に?」(音声)
子 「(うううん、と首を振り)クラスの子」(・・・考えさせられる表現ですね)
子 「来週ソワ休む」
kingstone「ソワしんどい?いや?」
子 「(うううん、と首を振る)」
kingstone「それやったら来たらどうかなあ。君が休みたければ全然かまへんねんけど、
いやなところじゃないんやったら来たら。なかなかええとこやし」
子 「(コクっとうなずく)」
私は「君が休みたければ全然かまへんねんけど」は本気で思ってます。
で、この後、このお子さんは落ち着いて過ごすことができました。
またあるお子さん。親御さんが「ソワに行く?」と音声で尋ねると「いや!」と言って、来ないということが続きました。もちろん「本人が理解し、判断した選択」であるなら何の問題もありません。しかし、そのお子さんには、周囲のスタッフさんからは相談は無かったのですが、私が「あれれ、このお子さんは・・・」と注目していて、「みとおしをつける」こと「自立課題学習」・「表現コミュニケーション」に取り組み始めたところでした。
私の立てた仮説。
1.みとおしがたっていない
2.(上記と同じだが)「今」のことで頭がいっぱいになっている。
3.わからない音声で言われることばかりで、とりあえずそれに対して「いや」を言うことが習慣化している。
そこで、まずご本人に「情報を提供して」その上で判断してもらおう、と考えました。そうした上で本人が「いや」「行かない」を選ぶなら、それはいいことですから。またソワは新年は新事業所での出発になるので、「場所」「部屋」なども伝える必要があると考えました。
で、通所日の前日にご家庭を訪問しました。
私の用意したもの。
1.「新事業所」までの地図。(以前の事業所と、新しい事業所の写真も貼っている)
2.「新事業所」の写真を含め、家→事業所→家のスケジュール
3.「新事業所」の間取りとどこで何をするかの図。(部屋の写真つき)
4.「新事業所」でできることのカード。(iPadとか)
で、説明したところ、にこにこしてました。そこで「行く」と尋ねると「行く」と答えます。実はこれは音声のみで尋ねたのでオウム返しである可能性もあります。でも体が行動を起こしていましたから。(しかし、それも、親御さん以外の人に言われたから、無理して行こうという、いわば過剰適応の可能性もある)
この日は通所日ではありません。しかしスタッフさんたちには「ひょっとしたら来るようになるかもしれないから」とは伝えていました。
これは仮説1と2とを考えて、まだ「明日行く」というみとおしは立ちにくく、また今、頭の中は今「行く」ということでいっぱいになっているのではないか、まずはそれを実現しよう、と私は考えたわけです。
で「選ぶメモ帳ふう」にA4の紙に(絵つきで)行き方を「車で」「歩いて」は選んでもらいました。「(親御さんの)車で」を選んだので「キングさんも乗せてね」とお願いするとうなずきます。で、親御さんが「キングさんはどこに乗ったらいい?」と尋ねると助手席を指さしてくれました。
で、事業所につき、部屋をひととおり案内。本来、親御さんは来られると離れてもらうのですが、この日は離れがたそうだったので、まっ、いいや、と親御さんと一緒に回ってもらいました。そのあと、iPadで少し遊んで帰りました。
翌日。本来の通所日。
なお、通所日は「巻物カレンダー」で示してはります。以前に、私が使っているのをチラッと見て、私が何も言っていないのに、親御さんがネットで探して購入してはりました。(よく探し当てはったもんだと思います)
とにかく「今」で頭がいっぱいだろうと、その日も「家から出発する」という「今」は、私が交渉してみようと思っていました。またお母さんと離れがたければ、いっしょに「こべつ(この場合は自立課題学習)」も入って頂いていい、とスタッフさんに連絡しておきました。
で、おうちについてみると・・・
ご本人が「ソワに行く。お母さんはついて来ちゃダメ!」と言って、一人で行ってしまったとか。
で、私があわてて戻ると、スタッフさんと楽しそうに「こべつ」をやってる最中でした。その後も楽しく過ごせたようです。
・・・で・・・その翌日・・・
親御さんから
「『今日もソワに行く!』と言ってきかないんですが・・・」とSOSの電話。
私は笑いながら、「巻物カレンダー」の今日の欄の下に「ふとんに入って寝る絵」を描いて「ねる」を伝えて下さい。そして明日の欄の上のほうに「ふとんから起きる絵」を描いて「起きる」を伝えて下さい。で、それを繰り返して、あと何回寝て起きたら来れるかを伝えてみて下さい、とお願いしました。
30分ほどしてから、確認の電話を入れてみましたら、最後の「で、何回寝て起きたらソワに行ける」というところまで来たら、「(少し怒りながら)(じゃあ、という感じで)買い物!」と言って買い物にでかけ、あとは機嫌よくしていたとのこと。
もちろん、まだまだ「みとおし」とかは確実じゃない部分もあるので、今後どうなるかはよくわかりませんが、まあその時はその時です。
でね、おめめどうのメモや、あるいはA4用紙に、私がいろいろ書いて(描いて)伝えているのを親御さんが見て、まねをして下さってます。また、最初はいくつか私が写真カードを作ってあげたりしました。で、私が
「でも、最初はこんなの準備するの面倒でしょう」
とお尋ねすると、
「いえ、でも、何か伝わる、という感じがして楽しいです」
とおっしゃって下さっています。
このエントリで言いたいこと。
子ども(本人)の意見は尊重しようよ。
でも、それは「わかる環境」を作って「ちゃんと伝えて」そして「判断」してもらってからのことだよな、という話です。