2004年8月20日 第1版第1刷発行
2009年8月10日 第1版第9刷発行←私が読んでるの
水島広子さんの対人療法関係の書籍は、以前「拒食症・過食症を対人関係療法で治す」を読みました。それも面白かったですが、この本も興味深いです。
最初のほうに「もっとも重要なキーワードは自尊心」というのが出てきます。
そうやなあ、と思います。
そして薬だけでなく、本人の環境への考え方も、また環境のほうも変えようとする療法と読み取れました。
私自身、うつの最初の診断(実は2軒目)の時に、お医者様に「私は環境は変えられないので薬を出します」と言われたことが強く印象に残っています。もちろん、そういう立場のお医者様もいていいと思っています。しかし、そこからどんどんネタキリ生活に入っていきました。「私自身への診断2」やはり薬「だけ」ではどうしようもなかったし、また実際「誰か」からのサポートというか承認が強く欲しかったです。(なんせ当時の私はネット上ではある程度の味方をして下さる方がおられましたが、リアルの生活では非難の嵐の中にいた感じがありましたから)
「重要な他者とは」の項目で、対人関係の重要度の円が描かれています。
1.配偶者・恋人・親・親友など
2.友人・親戚など
3.職業上の人間関係など
となっていて、下にいくほど重要度が下がるのですが、これについては異論もたくさんあるでしょう。著者も会社員のメンタルヘルスに関わっている方たちを対象にした講演会で「この図は一面的すぎる。会社員の中には、もっと親密なところに仕事上の関係者いるケースもあるはずだ」と突っ込まれ、「そういう状態がすでに不健康なのです。家族と仕事上の関係者が逆転してしまっていることが、精神的なもろさをつくってしまうのです」と著者は反論されてます。
でもまあこれはなあ・・・そりゃ理想的には配偶者・恋人・家族・親友などからいろんな支援が受けられればいいけど、そうはいかない場合もよくあるもんなあ・・・あっ、そか。もともと「重要度」であって、そこから支援が受けられないとなればダメージは大きくなるよ、という意味だと解釈すればいいんだ。よりそこに「いい関係」を求めるのではなく(もちろん求められるなら求めたらいい)、求められないなら他に求めるしかない、ってことで。
私自身はうつでネタキリになって、3年ほどし、その後少しずつ動きだしたのですが、それに力のあったのは、「嬉しかったこと」(これは家族。2010年02月14日)や「ツィッター」(これは親友?仕事仲間?2010年03月17日)というあたりになると思います。
またその患者さん本人が「相手に聞けない」と思っていることを「聞いてみる」ようにさせてみたりもしているな。(つまりそれ以前は単に「想像(あるいは妄想と言ってもいい)」であることに、実際に「直面」させてあげる、という言い方もできるだろうな)例えば元カレにふられたこと、そしてその理由がわからにことがきっかけで過食になってた人に、元カレに電話してみるように勧めたら、かけてみたら、元カレが自分の思ってたような人でないことがわかって踏ん切りがついてよくなった例とか。
また「親」や「配偶者」など周囲からの「期待」と、自分のできることの「落差」、逆に本人の「期待」と周囲の人のやってくれていることの落差を明確にし(文章化したり)、そしてできること、できないことをやりとりしながら明確にしたり交渉したりしてはる。すごくよくわかる。
ただし、治療例で「発達障害」を仮定すれば、結構わかりやすいのではないか、と思われるものもありました。
この本の題が「自分でできる対人関係療法」であるように、これを「治療」として「医師」にしてもらうのはたいへんだろうなあ、とは思います。以前読んだ「拒食症・過食症を対人関係療法で治す」のエントリにも
「しかし、この療法そのものは本の出た時点で保険適用になっていないし、やってくれるところは少ないし、なかなかたいへんそうです。標準的には50分の面接を12〜16回するとのことですが、そんなに時間の取れるお医者様はほぼないでしょう。水島さんも自由診療のクリニックで実現させてはりますが、それでも途中の面接が15〜20分くらいになることもある、と書かれています」ということで・・・
私、上記の医院に行った時、初診が30分、こじれてる時でも10分、現在はほぼ薬をもらいに行ってるだけという感じもあるけど、つい先日は2時間待ちの1分診療でしたもん。そりゃあ時間が取れないと思うわ。「療法」としてではなく、別の形でできることが大切かもしれない。
「拒食症・過食症を対人関係療法で治す」の中にも
「約半年後の治療終了時には、対人関係療法よりも認知行動療法の方が圧倒的に高い効果を示しました。ところが治療終了6年後まで追ってみると、対人関係療法の効果は伸び続け、6年後には認知行動療法よりも高く、行動療法の3倍以上の効果を示すことがわかったのです。治療で学んだことを、日々の対人関係の中で実践していくことによって効果が高まるのだと思われます。」
という記述がありました。そもそも私には「認知行動療法」がわからなかったのだけど、熊谷晋一郎さんがベテルの家の認知行動療法に参加した時のことを「つながりの作法 同じでもなく違うでもなく」の中で書いておられます。で、それでやっと私には認知行動療法が腑に落ちたのだけど、このベテルの家の場合、一緒に「対人関係療法」もやってると考えていいのかもしれない。
たぶん、それはいろんな「うまくいっている集団」の中で無意識に行われているもんかもしれないな、と思いました。
対人関係療法の歴史など
1930年代から1940年代にかけて米国のワシントンーボルチモア地域を中心に始まった。
源泉 アドルフ・マイヤー
貢献 ハリー・スタック・サリバン
その後 フロムーライヒマン、フロム、ホーナイ(新フロイト学派)
過去の対人関係を扱わず、現在の対人関係を扱う
パーソナリティーを変えることを治療目標とはせず、
パーソナリティーを理解したうえで、本人の対人関係のあり方を考えていこうとする。