嵐山光三郎 コンセント抜いたか
「志の輔が凄いことになっている」
この記事の中で6年前の談志・志の輔親子落語会での話、めちゃ面白いというか凄い。
六年前に、新橋演舞場で談志・志の輔の親子落語会があった。師匠と弟子の二人会を親子会という。談志は体調が悪く、余命いくばくもない、と客は知っていて、入場券には法外のプレミアがついた。一階の前の席にプレミア券を買った「青年実業家」の一団がいた。談志はそれが気にくわない。私は、立川企画の松岡氏(談志の弟)と一緒に三階のはしっこで観た。
談志は高座に座って、バカヤロ、テメーラ(あとは放送禁止用語の罵言雑言)と吠え、さっさと引っ込んでしまった。会場はシーンとしずまり返った。
このままでは、新橋演舞場に集まった客は、チャブ台をひっくり返されたままである。すかさず出てきた志の輔は、ひっくり返されたチャブ台の上に平然と座って、冷えた空気を、あざやかに切り返した。
客の心に腕を突っ込み、急所をつかんで爆笑また爆笑となって、その力業に舌を巻いた。それも客をくすぐる値の安い芸ではない。かたや談志、かたや志の輔という五分の格闘だった。
で
志の輔は、超満員の客を気分のいい笑いでほぐしてちょうどいい湯加減のところで下がった。
ふたたび談志が出てきて高座に座り、照れ笑いしながら「笑いをとりゃいいってもんじゃねえや」と毒づいて、噺をはじめた。会場の気分はポカポカと沸いていて、談志は機嫌を直し、めでたく親子会は終わった。
あとから思えば、タンカを切って噺を打ちきる談志と、機嫌よく名人芸を見せる談志の二通りを観た客は得をした。さらに、その緩衝として、「みどりの窓口」で切符を買うお婆さんの噺を、軽やかに、おし気なく出しきる志の輔の根性を惚れ惚れと観た。
う〜ん、1階で吠えられる立場だったらたいへんだったろうけど、3階で見てたら、めっちゃ面白かったろうな。というか1階の人たちも、ほっこりできたのかな?
しかし、照れ笑いしながら、ちゃんとやった談志もいい感じ。ムカッと来たら、怒りたいときゃ怒っていいと思うし。
ラベル:落語