グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独
映画を観て来ました。
グレン・グールド、めちゃ男前。ジェームス・ディーンかアラン・ドロンか、って感じ。
1932年、トロント生まれ。1955年デビュー。
話の流れからして、予告編の最初の方にも出てくるタクシーでコロンビアの録音スタジオで録画しに行くシーンは1955年かな。(おっと、パンフレットにちゃんと出てました。このタクシーでスタジオに乗り付ける映像は「実は」1959年のドキュメンタリー「グレン・グールド27歳の記憶」で撮影されたバッハ「イタリア協奏曲」収録の時のものだそうです)で、ピアノの前に座ったらいきなり鍵盤が胸のあたり。例のグールドのイスです。座面の高さ30cm。ここでプッと吹き出してしまいました。
ちょうど「はやぶさ」の映画で、「こんなこともあろうかと」というセリフが出てきたり、リポビタンDが出てきたりしたのを見た時と同じでしょうか。
で、そのシーンの音がすごく聞き取りやすかった。どう言ったらいいんだろう、と思っていたら誰かがそれを言ってて、字幕で「粒立った音」と言ってはりました。なるほど、そうか。
私は難聴で、人の音声言語が聞こえていてもわかりにくいことがあります。ちょうど音が連なってしまって、ひとつひとつの音を分けて聞き取れない感じ。で、それが1音1音が「粒だって」いれば聞き取りやすいんですよね。先日、補聴器屋さんに行った時のお店の方のしゃべり方がそうでした。
ま、そんな感じで音がすごく聞き取りやすかったです。
何年だったか、バーンスタイン指揮のNYフィルと演奏した時、バーンスタインが演奏前に聴衆に言った言葉。
「指揮者と独奏者の見解が異なった場合、独奏者が指揮者に合わせる。今まで私が独奏者の解釈に従ったのは1度だけ。それもグレン・グールドだった。今回はあまりに見解が異なっているので先に言っておく」
聴衆にウケてました。しかしこの演奏を評論家に酷評されたのも、グールドが演奏をしなくなった大きな理由のひとつだとか。しかし、このグールド対バーンスタインって、なんか御前試合というか武蔵と小次郎の巌流島の対決みたいな、そんな「遣い手対遣い手」の戦いを見るようなエピソードやなあ。
また演奏旅行についてやっている最中は夢中だけど後でとんでもないことをやったと思う、とかいうのに続いて
「演奏旅行に行くのは祝日の後学校に行くような、地獄(?ちょっと違う表現だったかも)に行くような気分だ」
とか言ってはりました。そんなこんなでグールドは聴衆の前で弾かないようになりレコード録音にこだわるようになります。で、録音し、いろいろとミキシング(?)してるシーンもありましたし、その技術者さんの思い出話もありました。当時、ネットがあればグールドはネットの世界で大活躍したのじゃないかと思います。また、プロモーションビデオみたいな映像も撮ってはりました。
グールドと言えば「奇行」で有名です。低い演奏用イス・夏でも手袋・夏でもコート・社交嫌い。で自閉症スペクトラムであったのでは、と言われています。そうかもしれません。
社交嫌いとはいうものの、「人当たりのよい」という評価をする人もいました。で、独身を通したと思っていたのですが、グールドの人生をいろどる女性は何人かいました。コーネリア・フォス(作曲家ルーカス・フォスの妻)は1968年にトロントで二人の子どもとともにグールドと暮らし始め1972年に夫のもとにもどるまで一緒にいました。なんかグールドも少しの間は「家庭」というものを持ったみたい。(この頃のコーネリアの写真はめっちゃ美人)
別れた理由は「グールドのパラノイアがひどくなった」「薬物(抗うつ剤・抗不安剤)の飲み過ぎの悪影響が出た」とコーネリアは語っています。それが何を指すのかはわかりません。しかしちょうど、今、出ているAERAの12.26号に「アスペルガーのパートナーのいる女性が知っておくべき22の心得」の紹介記事がありました。この記事を要約しちまえば「コミュニケーションし、かつ自分が自分であり、相手が相手である」そうあるための方法?そういうのがあれば別れなくてもすんだかなあ・・・
映画の中では「芸術と家庭的幸福とは両立しない」みたいなことを言ってはる方がいたけど、そうでない場合もあるかも。
1982年、グールドは脳卒中で倒れます。しかし病院に駆けつけた人によると、病室で本人が出迎えてくれたとか。その後何度も覚醒と昏睡を繰り返し、ついにグールドは亡くなります。元サッカー日本代表監督のオシムさんの例を考えると、今の日本だったら助かっていたかなあ・・・
で、また1932年生まれのグールドの動く映像がよくこれだけ残っていたものやなあ。
帰りにグールドのCDを買って帰りました。
posted by kingstone at 19:43|
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