昨日、補聴器の無料お試しをしてもらいに補聴器専門店に行って来ました。
今までの経緯を書くと、私は少なくとも高校生の頃には周囲の友達から「kingstoneのへんなこと聞き」というふうに言われていて、自分は頭が悪いのだろうか、と悩んでいました。宴会(大学生時代のコンパ)の時など周囲の話についていけず、話題がわからないままニコニコしているというのが続いていました。
で、教師になる時に健康診断を提出する義務があって検診項目をひととおり受け、後でお医者様が言ったひとことが
「あなた、日常生活、困ってません?」
??でした。でうかがうと高い音が聞こえていないよ、と。相当聴力が悪いですよ、と。
聞いた時は「わあ。私、頭が悪いんちごたんや!耳が悪かっただけなんや!」と嬉しくなりました。正直なところ。
後日このことをある人に言ったら「そんなもん、耳も悪うて、頭も悪いんかもしれへんやないか」と言われました。で、今、実際に私は「耳の機能の問題」とともに「脳の情報処理の問題」もあるよなあ、と思っています。しかしそれを言い出すと「脳の情報処理も含めての耳の機能」とかいう話になりそうでややっこしいですが。
で、これまでの人生の中で補聴器を勧められる機会は結構ありました。
しかし、日常生活で人と対面している場合、聞こえにくいと耳に手をあてる仕草をするとたいていの人は「ゆっくり」「はっきり」「大きめの声で」しゃべってくれます。また講演会などで聞きたいものがある時は最前列に座るようにすると、たいていは表情もよくわかるし、パワーポイントのスライドなどもよく見えるし、全然問題の無いことが多かったのです。
まあ、妻や息子がしょーもないこと言った時「ええっ?」と聞き返すと「もうええわ」と言われて寂しい思いをしたりはしましたが。あと基本的に宴会が大嫌いになったのはそこにいてもみんなの会話がわからない、というのもあるかな。
しかし、今回、大講堂での研修を受けることになり、参加したら、マイクを通した声をまったく聞き分けられず、最後列の指定席で講師の表情もわからず、パワーポイントのスライドもまったく見えない(視力も悪い)という状況になり、これは何とかしないといけないと思うに至りました。ほんまのところ隣近所の方たちはメモをすらすら取ってはるからちゃんと聞こえておられるようです。その方たちでも研修が終わると「疲れた!」という表情をしはるのに、まったく何もわからないでフルタイム座っている状況というのはめっちゃつらいです。(考えてみれば自閉症のお子さんって、結構こういう状況におかれているかもしれない)
で、補聴器の専門店に行って来ました。
まずお店に入って驚いたのは、店の方の話がめちゃ聞き取りやすい。こんなわかりやすい喋り方をして下さる方と私は会ったことがありません。特段「ゆっくり」とか「大きい」では無いのです。でもめちゃ明瞭。ひとつひとつの音がはっきり聞こえる。さすがプロだな、と思いました。そのことをお伝えすると「これは仕事用ですから。家で妻と話す時はこんな喋り方はしません」と笑ってはりました。
で、まず聴力検査をしてみよう、ということになりました。
簡易の防音室に入って耳をすますのですが、ピッピッと鳴る音に耳をすませているとそれらしい音(しかも音楽)が入ってきます。おかしいなあ、と思っても聞こえるのでボタンを押す、をしていたら店の方が困った顔をして入って来られて「今、押されたの全部聞こえてますか?」と尋ねはります。事情を説明すると「ああ、あれは近所の音楽ですね。じゃあこういった音だと覚えておいて下さい」といろんな高さの音をボリュームを上げて聞かせて下さいました。それをやってやっと「検査音」を聞き分けることができました。結果は両耳とも
250hz 25db
500hz 20db
1000hz 15db
2000hz 70db
4000hz 80db
8000hz 85db
私の実感としては、少しずつ進行しては来ているけど、子どもの頃(少なくとも高校生の頃)からはだいたいこんなもんじゃなかったのかな、と思っていました。しかしお店の方は「子どもの頃からこの状態ではアクセントや発音にもっと影響が出ていたと思います。子どもの頃はもっと聞こえていたと思います」とのことでした。
で、ここから補聴器の調整に入りました。このやつです。
今はパソコンでソフトを立ち上げ、補聴器とケーブルでつなぎ、hzごとの感度を調整していくようになってるんですね。ソフトの名前は忘れたけどパソコンはWindows XP でした。
もともとの聞こえの悪さをカバーしようとしたら、キンキンうるさすぎるとのことで目標の50%から。それだと、ほとんどキンキンした音は聞こえませんでした。徐々に上げ60%に。これは2000hz以上のところの話です。1000hz以下はほとんど音量を拡大しないようになっています。で、この状態だとお店の方がしゃっべってはる分にはぜんぜんキンキンしません。また特に聞きやすくなったとも思いません。それはもともと聴きやすい話し方をしてはるから。
でも自分がしゃべると高音域が少しキンキン聞こえます。
でその方の言うには紙を破る音とか瀬戸物の当たる音はびっくりするくらいですよ、とのこと。
驚いたのは、私は自分で「耳が悪いから大きな声を出す」というのは自覚していましたが、補聴器をつけると自分でうるさいから大きな声を出す気がなくなること。でもって、自分ではひそやかにしゃべってる気になるけど、お店の人に「それが普通の声ですよ」と言われました。
で、無料お試し期間、2週間設定して下さいました。ただし
「失くすと12万円ほどかかります。だから家の中でしかつけないで下さい」
とのこと。で研修の時つけたいのですが、と言うと、
「じゃあ研修に行き、部屋の中で落ち着いてからつけて下さい。慣れないとうまく装着できず、落とすことがあるので」
ここで初めて「買うとしたら」のお値段を聞きました。すると今、お試し用につけてるのは
片耳 22万円!! 両耳 44万円!!のクラスだそうです。なお、いくらなんでもこれは高いので今実際に売る時は片耳12万円、両耳24万円くらいのを「いいもの」として勧めているとのこと。そして「お徳用」としては片耳6万8千円、両耳13万6千円のもの。これはつい2011年2月までは片耳12万円両耳24万円で売られていたもの。型落ちになったために安くなっているが実用上はあまり変わらないとのことです。ちなみに高くなればなるほど騒音をカットして会話だけを浮き上がらせるような機能になっているとのこと。
いやはや、すごい。でも「ある程度いい物を」「価格の逓減は激しい」というのはパソコンを考えればよくわかります。しかしマジな話、今の私には購入できる値段ではありませんが・・・なお「公的補助は無いのでしょうか?」とうかがったところ、「あなたの場合は低音域が聞こえているので無理です」とのこと。補助が出るのは全体に、しかもかなり聞こえていない場合、本当に悪い場合だとか。しかし、進行していく方の場合、本当に悪くなってからだと使用したとしても使いこなせない場合があって、本当に悪くなる前から使えたほうがいいのだけど、という話でした。で、耐用年数は標準的に使って5年ほどとのこと。これは使い方によって長くも短くもなります。うむむ。毎日毎日使う精密機器やからそんなもんでしょうね。
そして試用にしろ本格的に使うにしろ「がんばらないで」「気合を入れないで」「いつでもしんどくなったら外して」ておっしゃっていました。う〜〜む、私が学んで来たことと、いろいろ一緒やなあ、と思いました。
それと「ハウリングはつきものです」とのこと。で「つらいところですが、自分で気づかなくても他人が気づくことがあります」とのこと。実際に帰宅後、私は気づかないのに、妻には小さくハウリングしているのが聞こえるそう。まあ、妻によると電車の中で音楽を聞いている人のシャカシャカ音が聞こえる時のようには気にならないそうですが。
また今回の私の直接の動機である「大講堂でのマイクを通した声を聞き分ける」にはほとんど役に立たないだろう、とのことでした。それは「慣れるのに時間がかかる(その間に細かく調整していくことが必要)」とかも理由としてあるとか。使えるようになるには時間がかかるそうです。
で、「帰り、つけて帰られますか?」と聞かれました。「家の中だけとのことでしたが?」と言うと「今だったら装着を私が見ているので大丈夫です」って。でつけたまま車の運転をして帰りました。
まずキーの当たるカチャカチャいう音がすごく大きい。またラジオはボリュームを最低でも20にして聞いているのが15で十分。また高音の騒音がいつもより多い。変な話だけど、「風景が違って見える」というか刺激が多くて運転にちょっと緊張しました。
で、帰宅後、妻と話をしましたが、妻いわくは確かにいつもより聞こえているようだ、とのことではありました。ちょっと「くっきり」したかなあ、という感じはありますが自分ではよくわかりません。ただ新聞をめくる時のバサバサ言う音が大きく聞こえ、トイレでトイレットペーパーを出す時の紙の擦れる音がよく聞こえます。そう言えばお店の方が「生活には関係ないですが、虫の声や鳥の鳴き声が聞こえたりもします」とおっしゃってました。確かにここ20年くらいは虫の声を聞いたことが無いような気がする。まだ昨日は「虫の声が聞こえた!」というのは無かったですが。
私は10年ほど前に「聞こえとことばの教室」で研修で「こういうのが補聴器」と体験させてもらった時のとは雲泥の差があります。これは補聴器がここ10年で発達した、とか、アナログとデジタルの差とか品物の差とかかな。
なおTogetterには今後のこともまとめていこうと思っています。
補聴器を試用してみた なおTwitterで「大講堂でのマイクを通した声を聞き分ける」には「FM補聴器が効果的」といった話もうかがいました。