自立課題学習について思いついたことを。
Qイ 自立課題学習とはなんですか?
A 「ひとりでできる学習」のうち、狭義には「机の前に座ってする」(別に立って作業台の上でやっても、農作業でも何でもいいんですが、いかにも「お勉強」らしく「机の前に座ってする」タイプのものが頭に浮かべやすいです)を言います。そしてその「課題」つまり「教材」もいかにも「勉強してる」ようなのとか「作業してる」ようなのを特に言うことが多いです。
Qロ 自立課題学習はなぜするのですか?
いろんな答え方ができます。
A1.「ひとりでできる」ことをするためです。それによって「やったぜ」という達成感を持ったり、「私はできるんだ」という自尊感情がアップしたりします。
A2. 簡単だからやるのです。設定された環境の中で「わかることをする」のは簡単です。設定されていない環境で臨機応変を求められるのは誰だって難しいことです。
このA1.A2は別に自閉症の方に限りません。
A3. 自閉症の方の場合は、様々な見えるもの「まず、どの作業をして、次にどの作業をして、その後休憩をして」とかがわかる手順書や、「次にしたらいい物が入っているカゴ」や、そのカゴの並べ方、作業が終わったらそのカゴごと入れる「おしまいボックス(終了ボックス・フィニッシュボックス)」を用意したりとか(使わない場合もあります)、そういう全体をワークシステムと呼んでいます。そして「こうしたらこの人はわかってひとりでできるんだ」が周囲の人に理解できれば、その工夫を外部に持ちだして、様々な活動に応用できます。そのとっかかりとして自立課題学習はたいへんやりやすく簡単なものなのです(指導者に理解できていれば、ですけど)
また、それとは別に「見て、どうやったらいいかわかりやすい教材」「場合によっては作業そのものの手順がわかる手順書(これをジグと呼ぶ場合もある)」「場合によっては『これを使えばこうとしかできないお助け道具』(これをジグと呼ぶ場合もある)」なども使って、「見てわかりやすく」します。(たぶん、これをむつかしげな言葉でタスクオーガニゼーションと言うのだと思う)
A4. 自閉症の人の場合、「休憩」の意味がわからなかったり、空いた時間に何をしたらいいかわからなくて混乱したりする方がおられます。そういった場合、自立課題学習は格好の時間つぶしにもなり得ます。そして「達成感」「自尊感情」も得られる、というお得な活動です。
Qハ 自立課題学習の課題はどんな物を使いますか
A 何だっていいのです。よく使うおもちゃ。プリント。何だってかまいません。その人が「興味を持ってでき」「ひとりでできる」ものであれば。
Qニ 自立課題学習のさい、まだひとりでできないことがあって教えてあげることが必要なのですが。
A それは音声言語で指示(教示)していますか?もしそうだったらそれは「自立課題学習」ではありません。
しかし「まだやったことが無いことを教えてあげたい」「できそうなんだけど」「できかけているんだけど」という場合は当然あると思います。その時はできる限り「見てわかる」もの(場合によっては誰かがモデルになる、ということもあるかもしれません)を用意します。しかし「手を取る」ことが必要な場合もあるかもしれません。私の実践動画にもその例があります。
この動画ではBさんに「身体的プロンプト」というか「手をとって」教えているシーンがあります。しかし、音声は出していません。また「どこまでできるかな」を瞬間瞬間に判断しつつ私自身はできるだけ引き下がろうとしています。本人に「自分で気づいてもらおう」とし、またできれば「自分で全部やった」と誤解して欲しいわけです。(というか、その前の段階として、私が「目で見てわかる」用意が不足しすぎているんですが・・・)
Qホ どうしてもあるところで毎回手をとる必要があるのですが。
A それは「自立課題学習」になっていません。教材があっていない、か、見てわかる手がかりが不足している、かのどちらかで、「ひとりでできる」になっていないわけですから。「手をとって」もあってもいいのですが、そういう「援助」は1回2回ですみやかに外せるものでないといけません。
Qへ なぜ音声言語をかけないのですか?コミュニケーションは人間にとって必須のものだと思いますが。
A 「コミュニケーションは人間にとって必須」当たり前のことを聞かないで下さい。しかし自閉症の人に対してある場面で、あなたのその音声言語はコミュニケーションとして成立していますか?また「自立課題学習」は「ひとりでできる」をする学習です。たいていの人は自分が夢中になってひとりで仕事をしている時、声をかけられなんじゃかんじゃ言われたいですか?
人間はコミュニケーションしてこそ人間。それはそうです。そういう学習は基本的には別の場でやって下さい。またやりとりが必要なゲームなどを教えるのも別の授業となります。(自立課題学習の中にコミュニケーション課題を入れることもできます。しかしそれはここに書いていることができた上での話なので、今日は触れません)
なお
では「自立課題学習」をやりつつコミュニケーションが必要なゲーム(この場合はカルタやトランプ)の授業を同時にやっていく様子がわかります。
Qト そうは言ってもよくできてることは褒めてあげたいですが。
A まず「自立課題学習」は自分一人で作業や学習を完成させた、そのことによって自分自身が「やったあ」「できた」と思えます。またそういう教材を選ぶ必要があります。それから「褒めてあげる」というのは「やったね」とかいう音声言語と笑顔とかだと思うのですが、それはやるとしても「すべての一通りのひとりでやること」が終わってからにしてあげて下さい。その時は本人も「やった」「できた」と思っているし、その時に「やったね」などと短い音声言語をかけられたら、その意味はわかることも多いと思います。
あなたが「褒める」ということを気にするより先に「適切な教材」「適切な見てわかる手がかり」を考えて下さい。そちらが先です。
動画での解説
自立課題学習は、わかってみれば簡単です。そして、そこで「こうしたらわかるんだ」という手立てがわかれば、その手立てを外に持ちだして社会参加ができます。