このアマゾンのアフェリエイトをコピーしようとしてびっくり。
これブルーバックスで580円の本なんです。それがロープライスで2994円!!
1977年(昭和52年)に出た古い本なんですが。もう34年も前の本になります。
まえがき
疫学は流行病学とも言われる。エビデミオロジー。明治22年(1889年)森鴎外「疫れい学」(れいの字はむつかしくて出てこない)
疫理学という名前だったら誤解も少なかったかもしれない。予防のための学問である。
疫学調査はプライバシーの問題に深くかかわるためその調査には倫理性が強く求められる。
可能性(ポシビィリティー)だけでなく蓋然性(プロバビリティー)にもとづいて予防対策上チェックすべき要因を指摘する。
(科学的に可能性は0では無いにしても、その起こりやすさ、確率はどうなんだ、ということですね)
まずスモンについて。
スモンは昭和30年頃からあったと思われますが、1例報告が上がったのが昭和33年。
昭和39年埼玉県戸田周辺で46人の患者の集中発生
同年 日本内科学会でシンポ「亜急性脊髄視神経症」Subacute Myelo-Optico-Neuropathy 頭文字をとってSMON(スモン)
昭和39年から3年間「下痢を伴う脳脊髄炎症の原因および治療の研究班」成果なし
昭和44年「スモン調査研究協議会」が発足。当時としては画期的な研究費(3500万円)(昭和45年の消費者米価10kg1150円。ということは今だと3倍で1億円くらい?)新しく調査票を作る。そのためには診断基準が必要。
昭和44年の全国調査。確実例2726人・容疑例1629人多発地区のきめ細かな調査を並行して行う。
緑色の舌 緑色の便 緑色の尿 尿中から緑色の物質(キノホルム3価鉄キレート化合物)と針状の結晶(非抱合型キノホルム)が発見された。キノホルムはスモン患者の治療に使われていたので死角になっていた
昭和45年8月)新潟大学の椿忠雄教授のキノホルム原因説
キノホルムは昭和9年から売りだされ、当時の売薬の胃腸薬のほとんどに入っていた。
ここまでは「後ろ向き調査(過去について答えてもらっての調査)」で原因を確定できるところまではいかない。
しかし昭和45年9月にキノホルムを販売停止にした後の患者数は劇的に低下した。これで明らかな相関関係が示される。
昭和47年3月スモン調査研究協議会は「原因と判断される」と発表。
ということで昭和33年に一例報告がされてから疫学調査を経て対策をされるのに12年、「原因と判断される」と発表するのに14年かかっているわけですね。
で統計の結果がある因子との間に相関があっても因果関係とは限らないわけで。
著者は「テレビの増加とスモン」について述べています。これは「誰でも相関はあっても因果関係はない例として思い浮かぶ」例として出してはります。ここらへんが「テレビの増加と発達障害」についてだと、専門家でも因果関係があるように言う方に実際にお会いしたこともあるなあ・・・まあ「わからない」というのがほんまのところだと思いますけど、その方は「あるように匂わせ」てはったし、テレビが様々な不都合の「原因」と主張する本はありましたね。(ちなみに私は因果関係が逆だと思ってます。テレビのせいで発達障害が増えたわけではなく、発達障害のある人がテレビに引きつけられる率が高い、であるのだろうと)
で、この本の中でも「原因」とされるものが単独ではなく「複数」ある例も出てきます。
また疫学調査をする時の調査の問題として、「はい」「いいえ」以外に「わからない」も必要であったり、大気汚染がひどい地域では呼吸器症状について尋ねれば答えは高めに出がち、とかいう問題もある。そちらへの意識が強いから。(しかしこれもひとつの実態と言えば言える。心理的側面として)というようなことも書いてはります。
そらそうやわなあ。
なお、著者の重松逸造さんについてWikipediaを見てみたら、チェルノブイリでの疫学調査もしてはります。で
1991年5月、ウィーンのIAEA本部で開かれたプロジェクト報告会において、汚染地帯の住民には放射能による健康影響は認められない、むしろ、「ラジオフォビア(放射能恐怖症)」による精神的ストレスの方が問題である、1平方km当り40キュリーという移住基準はもっと上げてもよいが、社会的条件を考えると今のままでしかたないであろう、との報告をまとめ発表した。 とのことですね。精神的ストレスもだろうし、経済的・社会的な側面、ごっつい大きかったやろなあ、とは思いますね。