※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2011年04月28日

久里浜日記1993年 5月17日〜20日

久里浜日記5月17日

講義のほんの少しのメモです。あくまでもKING STONEがこう聞いた、ということで文責はKING STONEにあります。


障害児の教育 −その課題−
言語器質障害教育研究室長
大石益男先生

言語指導と言う。

 しかし子供と出会った時にあなたに言うべき言葉はあるか、言うべき内容はあるか。また相手がどういう人か、何が好きかなどがわかっていないと話しかける気にもならないのではないか。

 例えば子供が花を指差して何かを伝えようとした場合「この先生は花が好きだった」と子供の心にうつっているのかもしれない。言葉はいつでも相手がいるはず。

教師のまなざしも大事。子供が足をバタバタさせている。「またわがまま言ってる」と見るか「ああ○○がしたいんやね」と見るか、それによってもずいぶん後の展開が違うはず。

基礎ができて応用なんて言うが、応用ができて基礎ができるのではないか。

(KING STONE・・・パソコンにしたって「まずMS-DOSやBASIC」っていうんじゃなくて、私の場合パソコン通信がやりたくて〔まさに相手がいる!〕やってるうちに少しずつMS-DOSのことなんか覚えてきたんだもんなあ)


障害児の教育 −その課題−
視覚障害研究部長
木塚泰弘先生

ないものねだりでなく、持っているもの(能力)を活用する。

視覚障害者の場合(?)予測→確かめが大事だし、それを活用しないとパソコンでも何でも身につかない。1cm横にあろうが地球の裏側にあろうが「無い」ことに違いはない。あることを予測して触れて確かめて初めてそれは「ある」。


障害児の教育 −その課題−
病弱教育研究室長
矢吹和美先生

健常な子どもの場合、7歳くらいで「今、ここ」の気持ちを「ちょっと置いといて」先生の話が聞けるようになる。ちょうど小学校入学の時期にあたる。しかし病弱の子にとっては様々な条件、心のにより、それが難しい。そこで外から与えられた課題に対しすぐにのれないところがある。そのような場合その子の「今、ここ」の気持ちはきっかけさえあればこちらに伝えてもらえる。教師の場合はそのような
チャンスも作りやすい。

(KING STONE・・・うーーん、矢吹先生ご自身が言っておられた「わけのわかんない世界なんだけど、それが大事」という感じ、うまくお伝えできません。残念。これは全ての養護学校で一緒という気がします。で、私はこういうのが大好きです)



久里浜日記5月18日

まだもうちょい概論的な講義がありますが、教育工学系のはこっちに書きます。ただしあくまでもKING STONEがこう聞いた、ということであり文責はすべて私にあります。


障害児の教育 −その課題−
教育工学研究部長
詫間晋平先生

教材・教具という時、教材はソフトウェア、教具はハードウェアと考えられる。その混じり合ったところがシステムであり、(授業ではそこを)最適化していくことが大事。この最適化(systematize)の部分をソフトウェアに対しユーズウェア(use-ware・和製英語・・訳せば利用技術か)とする。

健常児と呼ばれる子どもたちはすごいコンピュータを体の中に持っているんだから、パソコンなんて必要ないかもしれない。しかし障害児は持っていないのだから、補償するためにパソコンが必要な場面がある。(KING STONE・・・納得するなあ)

追記
 この部分、私がしっかりわかっていたか疑問ではあります。上で言うと教材って今で言う「コンテンツ」のことかな?
 で、ソフト・ハードそして使い方すべて大事。しかし「それで何を実現しようとしているのか」「どこへ向かおうとしているのか」みたいな背後の考え方の部分も大切かもしれない。まあ、上の話の前提には障害のある子どもたちが「わかってできる活動が少ない」というのが背景にあって、とりあえず「わかってできる」ことを増やそうという段階なんだろうな。
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 さて今日は帰ってからClassic2でOさんとネットワークを組んでみました。確かに認識してます。でもうーーん、最後の最後でつながらない。やはりMazeさんがいないと難しいかあ。

追記
 AppleTalkというやつです。有線LANですね。

先日、現在パソコンを持ってらっしゃらない方が「MACを買う」とおっしゃいます。私は「はやまったらあきませんよ。よかったら私のMACをゆっくり触ってから決められたらどうですか。MACの不便なところもいろいろありますし」と答えておきました。その方が今日MACを触りに来られました。タッチウィンドウ(タッチパネル)をつけてハイパーカードの教材をいろいろ触っていただきました。そして自分のスタックを作っていただき声を入れてもらったり、リンクさせたりして遊びました。そしてたら

「私はワープロは専用機でやります。子どもに教材を作ってやりたいんです。だからMACを買います」

とおっしゃいました。私ゃどっちかというと止めたんですがねえ。しかしこれだけ目的意識がはっきりされていたら後悔はしはらないと思いました。


久里浜日記5月20日


今日は久里浜養護の校長先生のお話がありました。たいへん興味深い話がありましたが、微妙な話もあり許可をとるのがたいへんそうなので内容を書くことはやめときます。

今日は個人的には一生懸命HyperCardの入門書の勉強をしていました。やっぱり自分で作れなきゃ、と思いますしね。ところがひょんなことから久里浜養護の先生の教室をお尋ねする機会を得たのですが、その先生のMACのHDDの中を覗いて「ドヒャー!!」私が作ろうかな、と思ったようなものがもうほとんどできてる。まあ、それでも自分でできることも大切だから勉強は続けていきますが・・・・

ところで、今日はその後、三崎というところにまぐろを食べに行きました。ここは三浦半島の先端にあたり、すぐ先が城ガ島になります。ここはまぐろの基地らしいです。

1100円のねぎま丼。うーーまかったーーー。

posted by kingstone at 07:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 久里浜日記1993年 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

4月28日(木曜日)

 おはようございます。

 曇りです。

ラベル:挨拶 天気
posted by kingstone at 07:23| Comment(0) | TrackBack(0) | よしなしごと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月27日

ある地域のガイドヘルパー制度

 今日、ある地域の知的障害児者のガイドヘルパー制度について調べて来ました。

 まだまだ取材しないといけないのだけど、今日わかったことだけ。

 ちゃんと制度はあります。

 福祉関連の情報が載った冊子(ただしまだ23年度版はできてないだか、冊数が少ないだかで、当該ページだけコピーして下さいました)に「ガイドヘルパー派遣」の項目に「知的障害者」という枠で載っています。

1.18歳以上の者にあっては療育手帳所持者
2.小学生以上18歳未満の児童にあっては療育手帳A,B1又はB2程度の者

ってことは療育手帳持ってりゃいい、ってことですよね。Cなんてのは聞いたことが無いから。

 まず印鑑と療育手帳を持って「保護者」か窓口の人の言葉では「判断できる人」が手続きに行きます。
 この「判断できる人」というのは、例えば私なんか(そのガイドヘルパーを頼もうとしている人の家族でも無い者)はダメ、という意味だそうで、「保護者とかですよね」と尋ねると「そうだ」とのことでした。

2.の「小学生以上18歳未満の児童」は、

1)役所で日常生活の状況の聴きとりをして書類を作る。
2)子ども家庭センター(って昔の児童相談所ですよね)に書類を送る。
3)子ども家庭センターでいろいろ判断
4)利用者証が届く

となります。1.の18歳以上の方だと役所の窓口で手続きして「利用者証」を作るところまでできちゃうとか。手間がだいぶ少なくて済みます。

 で、子ども家庭センターや役所で出すのは上限20時間/月の利用者証。

 ってことは1日5時間の利用だと4日。
 2.5時間で8日。
 土日に使うとしたら2.5時間でいっぱいだな。

 もちろん、何をどう考えはるかはわかりませんが、もっと少ないことも考えられる。

 で、利用者証が交付されたら、今度は認定業者さんに申し込んでそしてかかる費用の1割負担とのこと。
「いくらですか」と尋ねたら、役所の窓口ではわからないとのことでした。業者さんに尋ねてみる必要があります。

 ってことで、明日でも業者さんに尋ねてみよう。

 それと「『日常生活の状況』聴き取り結果整理票」を貰ってきました。項目がなかなか面白いので、一部アップしたいと思いますが、これまた明日。
 

posted by kingstone at 22:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 福祉関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

中間管理職育成講座初級編 第4回〜第6回

マチート 中間管理職育成講座初級編4


【事例1:登校拒否】
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氏 名:テツオくん(仮名)
年 齢:13歳(養護学校中等部2年生)
トラブル:母親に付き添われて徒歩通学する途中で窓や扉が開いている民家を
見つけると,テツオくんは突進して行き,パシッと大きな音を出し
てそれを閉める.特に,頻繁に窓を閉めに行く家の主人はそれを絶
対許容できず,大声で本人ならびに母親を叱りつける.母親は,登
校が憂鬱であると担任に何度かこぼしており,実際特に病気でもな
いのに学校を続けて欠席することが増えてきた.
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□ トラブルの分析

 最初の事例は,とある学校の職員ミーティングで常に話題に上るトラブルです.一人ひとりの職員は, 親身にそして熱心にトラブルの解決をはかろうとしているのですが, いかんせん職場はレベル1です.プログラム決定における,中間管理職の役割の認識がまったくない職場です. まず,テツオくんのトラブルをもう少し詳細にまとめてみましょう.

■ 4つの側面

【行動】

「窓や扉が開いているところを見つけると. 突進してパシッと閉める」がテツオくんの基本的行動パターンです. 特に大きなトラブルとなっているのが登校中の他人の家の窓を閉めることです. しかし,学校においても頻繁に見られる行動で,急に走り出した(教室や列からとっさに逃げ出しているように見える)かと思うと, けっこう離れた場所にある窓や扉を渾身の力を入れて閉めたり,繰り返し開け閉めしています.

【環境】

登下校は, 母親が学校から自宅まで付き添っています.登校中に,窓や扉が開いているところが, 不思議なことに必ずあるのです.通学中によく叱られる家の主人は, 非常に怖い人です.学校は,テツオくんの行動に取り立てて何らかの工夫を行っている訳ではありません. いわゆる典型的な養護学校です.校内に, テツオくんの餌食になる窓や扉は,まるで無数にあるかのようです.担任の先生は,特殊教育を10年以上続けているベテランで,大変熱心です.しかし,自閉症や個別のプログラムに関する最新の知見をもっている訳ではありません.

【見方】

職員ならびに母親は, この行動は自閉症固有の強い「こだわり」だとみています. 特に担任は,この「自閉症固有のこだわり傾向をいかに減らすか」「そのために私たちは彼にどんな関り方をしていけばよいのか」 が唯一のトラブルの解決策だと確信しています. 登校時のトラブルとして考えるこはできず,あくまで「こだわりという問題行動」 がターゲットです.母親はというと,先生のこの考え方に同調しているようです(他に頼れる人がいない) .しかし,登校のトラブルは, まさに切羽詰まっており,登校拒否状態の多くは自分の責任であり,自分でなんとかしなくてはならないと思い詰めています.

【応対】

窓や扉を閉めにテツオくんが突進する際, 職員も母親も,ほとんどの場合止めることができません. とっさにスタートする,スピードが速い,(偶然制止できても)力が強くすぐに逃げられる,どこに向かって行くか予測が立てづらい,などが原因です. 特に,集団で管理をしている担任は,なぜ走り出したか予測できない場合も多いようです(トイレも走って行く) .制止できるのは,目的地でパシッと閉めてからです(本人は既にある程度満足している訳ですが) .

テツオくんが突進すると, その後を追いかけ,「駄目じゃない,黙って走り出しちゃ」 「窓はそっと閉めてね」などなどと説教をし,手を引いて元に戻るパターンの応対が一般的です. 時に,強く叱責,お尻を叩くなども行っているようです.

■ トラブルを解決できない理由

これまで講座を続けて聴講された皆さんの半分くらいは, 上のように情報が整理されていれば, この職場がどうしてレベル1なのか,そしてレベル2に格上げするには何が必要かが推理できるはずです.いかがですかみなさん? と,疑問を投げかけ,挙手と発言を待つ講師であった.....


ps 皆さん,中間管理職候補になったつもりでつきあってね.まじめな回答,ハチャメチャな回答,ピンと外れの回答お待ちしております.


マチート 中間管理職育成講座初級編5


前回の問いかけにいくつもレポートがとどいております. 今回は,その感想を
述べさせていただきます.

Aさんへ

道東(それとも辺境? )の地からとうとう登場ですね.それも,ピントはずれにのっていただけるんんて, なんと芸達者な.でも,回答が途中で切れてしまっているような(これもポーズかな) .ところで,....「すっかり飽きてしまう」 仮説って,現場でけっこう定着しているのですか? それと,名前ハンドの意味もこっそりと教えてくださいね.

Bさんへ

はじめまして(ご挨拶遅れ気味) .またまた,アクティブなメンバー登場ですね. ちなみに上のAさんは,周辺地域の職場の人達と勉強会をはじめていると,噂を聞きました(とはいっても道東は広い).

行動を変えようとするのは, 誰もが通る道であるだけでなく,いつまでたっても正しい方向であると, 私は考えております.ただし,中間管理職を目指す以上は, 少なくとも,神様がお作りになられた(?)格言,『確かに,周囲の物理的な環境を変えるのは面倒だし反対意見も多い. でも,自分の行動を新しいルーチンにのせ変えることは, もっと難しい.さらに,自分の行動をその場その場で臨機応変に変えることは, もっともっと難しい.その上,他者の行動を変えることなんて, もっともっともっと難しい.』を実感して欲しいと,期待する訳です. 日本のある程度の規模の生産工場における安全管理教育は,まさにこの格言を実践していますが, 教育や医療,福祉の現場には宣教師が見当たりません.

Cさんへ

これは, 電脳世界の架空の講座です.もっと軽く,軽く.レベル0の件もそうですが, 現実世界の問題からひとまず引いて(完全に遊離すると実は困るのですが) ,この講座の文脈にのっかってね.そういうトレーニングも,意外と役立つものですよ. それともうひとつ,レベル1の職場をレベル2にする戦術だけを考えればいいのです. Cさんのは,一気にレベル2,レベル3,レベル4まで狙っています.

という視点からすると, 私が触れないでおいたツボのひとつを見事に暴いてくれました. 「なぜ戸を開けっぱなしにしているのでしょうか?」 そう,そこは下町で, 季節は夏なのです.レベル1の職場では,こういうあたりまえの情報も議題にのらない欠陥をもっています. これをばかばかしいと思ってはいけないのです.

Dさんへ

おっと, Dさんはせっかちなのだから.もう模範解答を書いちゃって.せめて, あと14時間ほど後に書いてくれれば.ん.もしかしたら時差の計算ミス?

 それにしても, 講座1〜3までのあのわかりにくい話で,ポイントをすべて盗まれてしまいました.これから先の話だって,見透かれているような...

養護学校において中間管理職がどういう立場でどういう機能と責任をもつかは私も知りません. また,該当するポストも知りません.逆説的ですが,ここにこの講座の存在意義があると考えていおります.

ところで, Dさんの回答を読んでいて思ったのですが,Dさん御夫婦が発達障害をもつ家族やその子が通っている療育・教育・福祉機関のスーパーバイザー会社を開設して, 1年くらい実践を積みながら研修すると,多分日本で1番のサービスが提供できるようになるのではないでしょうか. 今の,この業界で専門家と呼ばれる人以上の仕事は(どんなに著名な先生だって目じゃないですよ) ,1年あればできますよ.10年後には,世界一を目指すというのも素敵ですね.問題は,経済的な安定が望めないことですが.

□ 聴講の心構え

皆さんの御感想はいかがでしょうか. 今回のレポート批評で,この講座に参加する心構えが少し理解していただけたでしょうか.私が求めているのは,

1) 現実世界から一歩引いてみる
2) 講座の文脈にのっかる(ことば遊びのノリですよ)
3) 軽く,軽く
4) わかりやすいが一番(講座は難解ですが回答は単純に)
5) すっちゃかめっちゃか,ピントはずれの回答の中にも真理あり



マチート 中間管理職育成講座初級編6


講座4の問いかけに対するレポートがまだ届くかもしれません. でも,模範回答が出てしまった以上,先へ進ませていただきます.

□ どうしてレベル1なの

テツオくんが通っている学校がレベル1である根拠は, トラブルに関係している当事者が,このトラブルを共通した見方で見ることができていないからです.もちろん, テツオくんに対して具体的な問題解決の計画ならびに実践は何も行われていません.困っている(トラブルじゃー)と認識はしているようですが.

■ レベル1を維持する技術

共通した見方を妨害している, 第1の原因は,「こだわり」という名前づけで一連の「行動」 を括っている事だと推測されます.おかげで,現在のトラブルが「自閉症固有のこだわり行動の解決」 という化け物にすり変わってしまいました.

ここで, 皆さんに重大な処世術をお教えいたします.この業界の中間管理職とはけっこう面倒な仕事ですし, 研修してもしてもこの仕事が楽になる事はありません.現に,あなたの口から,

1) 業務範囲の割りに権限が非常に少ない(人事権が少しでもあれば)
2) 労働量の割に持ち分の予算が少ない(自由に使えるお金がもう少しあれば)
3) 熱心に仕事に取り組んでも取り組んでも担当者の苦情処理は減らない(何とわがままな奴等だ)

といった三種の神器ならぬ三種の愚痴が出ない日がないことを私は知っています.こんな嫌なポストは早く通過したいものです.それには,

1) さらに上の管理職試験の勉強に全精力を注ぐ
2) 人脈・コネクションを大切に(どこでも顔を出し, ゴマをすり,嫌がっている仕事を助けてあげ,ツケトドケをする)
3) 細々とした実務は手堅く(これは評価が明瞭な仕事です.手抜きは危険)

これしかありません. 中間管理職の本来の仕事である,職員教育とそれによる職場のレベルアップに時間を割く暇はありません. そこで登場するのが,この処世術です. あなたは,必要なキーワードをいくつか暗記すればいいのです.そして, 各トラブルの解決ミーティングでは,キーワードから適当なものを一つ選び, 自信に満ち満ちた顔をして,そのキーワードを口にするのです.出し惜しみする事はありません. しつこいと言われても気にしてはいけません,さらに大きな声でキーワードを繰り返してください. あなたは大変な割りに実入りの少ない中間管理職なのです, 声の大きさだけで担当者をねじ伏せる権限くらい持っても罰はあたりません.

もしあなたが, テツオくんの職場の中間管理職だったら.あなたは「自閉症固有のこだわり」 というキーワードを繰り返せばいいのです.自分が話せる合間を逃さず,

「一生懸命勉強して,粘り強く,愛情をもって当たってはじめて自閉症固有のこだわりを減らした経験を私はもっている.本当にいい経験だった」

とか

「自閉症固有のこだわりとは, 一生引きずるものなんだよ.著名なレオ・ラター先生の本にもそう書いてあったっけ. こだわりは大変なんだ.」

と口走りましょう. 自分の発言に論理的な整合性なんていりません.大切なのは,キーワードを言い忘れないことです. ついでに人の発言を聞くときは,

「んーーーん」

と唸りながら腕組みをする,天井に顔を上げて溜め息つくなどを数回やっておけば構いません. ただし,参加者の中で具体的な方針を提案したり,その決議を欲する動きには敏感になってください. そういうときは,すかさず.

「こだわりは大変なんだ. 明日からも頑張ろう.」

と大声を出し,ミーティングを終了しましょう.

さあみなさん練習です. 腕組みをしてください.大きな声で言いますよ.ご一緒に.

「こだわりは大変なんだ.明日からも頑張ろう」

反応が鈍いですね. 決してネガティブな意図で話したわけではありません.中間管理職に長らく引っかかる事で,その地域社会の障害児者教育・福祉の発展,さらには福祉・教育全般の進歩に悪影響を及ぼす人材もたくさんいるのです.

適材適所, ならびに職業選択の自由の世界です.もっと大きな権限をもってもリーダーシップを発揮できる, 高級管理職育成講座があなたをお待ちしております.

ちなみに中間管理職育成講座初級編はまだまだ続きます.
posted by kingstone at 15:07| Comment(2) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

中間管理職育成講座初級編 第1回〜第3回

 これからマチートさんが1996年に書かれた「中間管理職育成講座」を数回に分けてアップしたいと思います。


 言わずもがなのkingstoneの前書き。


 マチートさんは当時、成人施設を切り盛りする立場におられました。


 ここで中間管理職と言うのは、特別支援学校だったらクラス主担(主任・主事)学年主担(主任・主事)学部主担(主任・主事)などにあたるでしょうか。特別支援学級であれば1クラスだったらまさにその先生自身だろうし、複数クラスだったらそのチーフになる先生だろうし。(いずれも私が勤務していた大昔は給与上などは何も変わりはありませんでした。地域によっては学部の主になる方は手当が違っていましたが。あ、学年主任も国からの手当はあったか。組合によっては返納していたけど)


 しかし、実際問題としてはヒラであったとしても中間管理職として動かなければならないことはよくあります。ある理念を持って、かつ組織をうまく動かしていくためには中間管理職としての働きが求められます。


 例えば私は特別支援学校でクラス主担(同時に学年主任)になったのは97年・98年の2年で後は降格(?もちろん後進を育てるために若い人が主になる、ということはあり得ます)でしたが、実質上は中間管理職的にクラス・学年・学部・学校の改善を99,00もやり続けたのではないかと思っています。


 マチートさんは「中間管理職育成講座」と銘うたれていますが、たぶん「みんな」に必要な知識じゃないかな。

 また基本的に1996年(15年前!!)のままの文のうち名前など一部改変を加えていますが、基本的にはそのままアップします。ですから今ではマチートさんが使われない表現もあるかもしれません。


 では、始まり。


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マチート 中間管理職育成講座初級編1



□ 目的


この講座は, 自閉症をはじめとする発達障害をもつ子どもや大人の療育・福祉・教育に従事している人向けのものです. それも,現場の援助プログラム決定に発言力があり, 職員研修計画を委託されている中間管理職向けの講座です.目前の発達障害をもつ子どもや大人の問題行動を理解したい, あるいは無くしたいと切実に願っておられる直接サービス提供者は, 「問題行動の理解と対処法マニュアル 」を御利用ください.入手先は次の通りです.


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中間管理職の方でも, 上記のマニュアルをまだ利用していない方は,早速入手し,読破しておくことを強く勧めます.


さて,本講座の目的は以下の3点です.


1) 起きているトラブルの原因を探る思考法の整理

2) トラブルが解決できない職場のシステム上の不備の指摘

3) 職場のシステムをどの方向に変化させていけばよいか考える機会の提供


□ あなたの職場のレベルは?


下の図を見てください. これは,あなたの職場が,発達障害をもつ人個々に,どれくらい柔軟で質の高いサービスが提供できているかを表した概略図です.



援助の成果↑

| (1)---レベル1

|\

| \ (2)---レベル2

| \

|\ \ (3)---レベル3

A| \ \

| \ \(4) (4)---レベル4

|\ \(3) \

B| \(2) \ \

|(1) \ \ \

+−−−−−−−−−−−→ 要求される難度

a b


水平軸の「要求される難度」 とは,あなたの職場に求められている課題の困難性を示しています. たとえば,職員1人に対して2人の障害者にサービスを提供している職場より, 5人の障害者にサービスを提供している職場の方が,要求される難度は高いといえます. たとえ,職員配置の割合が同一でも,知的に重度な障害をもつ人が多かったり, 行動上の問題を示す対象者が多い職場も難度は高いはずです. また,発達障害児者の援助に未経験の職員ばかり(職員が定着しない) ,限られた職員研修の機会や資金しか持ち合わせない,保護者会からの希望が多いなども,その職場に課せられる難度は高くなります.


垂直軸の「援助の成果」 とは,あなたの職場が発達障害をもつ利用者の生活をどれくらい向上させたかを表しています. 学校であれば,学習の進度や発達の促進が見られる, 一人ひとりが落ち着いている,静かだ(先生が大声を出さずに済んでいる) ,保護者の満足度が高い,地域の親の会から人気の高い教室,たくさんの一般就労卒業生を出している, などが代表的な成果です.成人の施設では, 生活全般に選択範囲が比較的広く保証されている,という成果もありますね. 厳密に,誰もが納得できる定義された成果とは何かについて,ここでは深く追求しません.ファジーに考えてください.


そして, レベル1,レベル2,レベル3,レベル4とは,あなたの職場の力を表します. 数字が大きい方が,より柔軟で質の高いサービスが提供できている職場です. なぜなら,「要求される難度」が高くなってもより高い「援助の成果」を生み出せる職場だからです.


ある職場では,垂直軸で A の成果をあげていました(上の図参照).この施設は, 地域からも比較的良好な評価を得ていました.ところが,今年から,行動上の問題が頻繁に見られる利用者が2人通うことになりました. いままで,水平軸の a の難度から,急に b の難度が要求されてしまったのです.昨年同様の A の成果をあげることはできなくなってしまいました.なぜなら,この職場はレベル2の力しか持ち合わせていなかったのです(垂直 A と水平 a の交差点を確認してください).事実 B ,つまり今までの半分の成果しかあげることしかできませんでした.難度が b に上がっても,同じ成果を維持するには,職場の力をレベル3(垂直 A と水平 b の交差点を確認してください)に上げなくてはいけません. 今までの,プログラムやその決定のシステム,職員教育ではそれは無理です.


ここで辛辣な主張をいたします. 現在の多くの療育・教育・福祉の職場は,レベル1です. ですから,今のあなたの職場はレベル1なのです.この現実をあなたは受容しない限り,決して職場のレベルアップは実行できません.




マチート 中間管理職育成講座初級編2



□ トラブルを扱う


この講座では, 職場の力量を判断する材料として,「トラブル」を扱います.ここでいうトラブルとは,一般に自閉症やその他の発達障害児者の問題行動とか,強度行動障害児者の問題といわれているものです. なぜトラブるという言葉を選んだかというと, 発達障害をもつ人の問題行動に困っている現場の多くは,行動そのものというより, それにより派生する周囲を巻き込んだトラブルに困っているという現状があるからです(実際には気づいていない人が多いですが).


トラブルとは, 非常に社会的な,そしてときには政治的な事象です.まさに,中間管理職の皆さんが扱うべき課題ではありませんか.


□ トラブルはどうして大きくなるか


この講座では, トラブルが大きくなったり,小さくなったりする要因を4つに分けて考えます.下の図を覚えてください.


+------------+

| トラブル |

+------------+

|

+---------------+-----+--------+---------------+

| | | |

+----------+ +----------+ +----------+ +----------+

| 行 動 | | 環 境 | | 見 方 | | 応 対 |

+----------+ +----------+ +----------+ +----------+


【行動】

行動とは, 発達障害をもつ人の行動そのものを指します.


 この行動の強度,頻度がトラブルを大きくもし, 小さくもすることはお分かりだと思います.比較的低年齢の子どもによくみられる例をあげます.


「ピョンピョンと飛び跳ねる」

子どもの行動は, 1日に数回の頻度より,数十回あるいは数百回の頻度の方が大きなトラブルになるであろうと, 誰もが予想できると思います.飛び跳ね方も, ピョンピョンと軽く繰り返す程度ならよいのですが,椅子や机,箪笥(本棚)の上から繰り返し飛び降りるというスタイルになってしまうと,トラブルが大きくなりそうです. さらに,体重が20キロの子どもと,80キロの子どもとでは,大違いです.


【環境】

環境とは,上の行動が起こっている場面の,物理的・社会的な環境を言います.


行動が同じであっても, この環境によってトラブルは大きくも小さくもなります. ピョンピョンと飛び跳ねる子どもの例では,広々とした公園で飛び跳ねるより, 満員電車の中で飛び跳ねた方が大きいトラブルになります.また,集合住宅の自宅で, 防音設備に不備があり,階下に口うるさい家族が住んでおり,深夜に飛び跳ねられると大変大きなトラブルになります.


もっと, 複雑な社会的環境も考えられます.この自宅でピョンピョン飛び跳ねる子の両親には, この行動に対して具体的に相談にのってもらえる専門家や同じ障害をもつ親のグループといったネットワークをもっていれば, 多少なりともトラブルを少なくできそうです. さらに,近所づきあいが巧い,常にお詫び用の菓子折りを保管しておく周到さ, 祖父母のケアや心理的支援が大きいなども,重要ですね.


【見方】

行動の受け手側の社会的環境は, 深く推理しはじめるときりがありません.そこで,行動をどのように受け止めるか,その見方という分類を加ます.つまり,見方とは,行動を周囲にいる人間がどのように見・考えているかを指します.


ピョンピョン飛び跳ねる子の母親が,「子どもの問題となるような行動は私にすべて責任があり,すべて自分で解決しなければならない」と考えている場合と,「子どもの行動は私一人だけで解決することは難しく,家族,友人,専門家などの意見や援助を活用する必要がある」 と考える場合とでは,トラブルの大きさは全く違ってきます.見方を表す代表的な言葉をいくつか紹介します.


抱え込み VS 放り出し

計画的 VS 場当たり的

楽観的 VS 悲観的

受動的 VS 能動的

訓練的 VS 支援的

ノーメーティブ VS オルタネーティブ

厳格 VS ずぼら


【応対】

応対とは, 行動に対して周囲にいる人間がどのように応対しているかを指すものです. 応対の如何によって,行動が強烈になったり,持続したり,弱まったりすることは, 学習心理学の分野では常識になっております.ですから,この応対がトラブルの大小に大きな影響を与えるのは当然ですね.


ただし, 個々の,あるいは一対一の分析に長ける学習心理学と,職場の職員全員の教育に責任をもつ中間管理職のあなたとでは, 応対について異なった視点をもつことが大切です. 複雑な分析ではなく,まず,どれくらいの割合,統一的な応対ができるのかどうかに注目してください. 自宅でピョンピョン飛び跳ねる子の応対に, 両親は,


  1)叱る,

  2)叩く,

  3)無視する,

  4)抱きかかえて制止する,

  5)手を取り外出する,

  6)お菓子を与えて制止する,

  7)布団を引いてクッションにする,

  8)お風呂に入れる,


などなど,非常に多くの応対を無意識的に使い分けているかもしれません.さらに,一般の療育・福祉・教育の職場では,応対する人が1人ではありませんから,応対のバリエーションや一貫性の割合は,まさに千差万別になります.



マチート 中間管理職育成講座初級編3


講座1では, あなたの職場の力量をレベル1〜4に分けるアイディア(概略図あり)を, 講座2では, あなたの職場で起きているトラブルの大小には「行動」「環境」 「見方」「応対」の4つの側面から分析するアイディアを提案させていただきました. どちらも,非常にマクロで,厳密さに欠ける仮説です.ところが,この二つの仮説を頭に入れ, 私が多くの職場を観察したところ,一つの傾向が見えてきたのです.


□ レベル毎による職場の視点


【レベル1】

もっとも職場の力量が弱いこのレベルは, 先にも言った通り,あなたの職場です. そして,このような職場は,トラブルが起きているとき,その「行動」にほとんどの視線がいってしまいます. 他の側面はほとんど見えていないようでもあります.


 ただし,ケース会議や職場の打合せでは,「行動を変化させるに,私たちはどのように関わっていけばよいのでしょうか?」と必ず言います.つまり, 「応対」にも気にかけているかのような発言がたくさん出ます.でも騙されてはいけません. 実際,今どのような応対をしているか,厳密に洗い直すことはありません. もし,誰かから偶然,洗い直し案が出されたにしても,どうやっていいか全くわからない, あるいは全く役に立たない洗い直し方法しか思いつかないものです. 結局,次の会議に,新しい情報を元にした提案が出されることはありません. 応対が気になるのは,何らかの根拠があるわけでも,実績があるわけでもなく,多くの場合,トラブルを解消する絶対的な応対(関わり方)があるという迷信を職員が抱いているだけのようです.


【レベル2】

ひとつ上のレベルは, あなたがこれから目指すべき職場です.この職場は,トラブルが起きているとき, 職員間でいかに「見方」を一致できるかに力を注いでいます. そして,中間管理職が十分本来の働きをし,見方を一致させる(大きなゴールを決める)ための仕組みができています.


 つまり,どういう時に,どういうメンバーで, どういう情報を持寄って,何を決定するためのミーティングを行うか, ほとんどの職員が知っている職場になっています.また,このレベルの多くの職場では, 見方を一致させ実践をすすめてきた中で,「環境」特に物理的な環境の変化がもっともやさしく, そして効果的なトラブル減少の戦略であることを知っているようです. ただし,環境を整備するための完成したシステムまでは, 持ち合わせておりません.もちろん,トラブル解消の絶対的な応対といった迷信は,ほとんどの職員が信用していません.


【レベル3】

さらに高いレベルの職場では, 「見方」の一致と「環境」調整のシステムは完備されております.ここまで成熟していると,レベル1で全く不可能であった「応対」の統一に着手することが可能です. 絶対的な応対は存在しないが,見方と環境の整備に加え, いくつもの有効な応対が考えられるようになっているのです.


ただし, ここでも最良の応対を見つけ出すシステムは出来上がっておらず,手探り状態が続いております. ただし,計画した応対が効果的であったかどうかをチェックする機能は働いております.


【レベル4】

ここで私の無知ぶりを白状しなくてはならなくなりました. 実は,私はこのレベル4の職場を知りません. そんな職場があるのかどうかもわかりません.多分, 「見方」「環境」そして「応対」を調整できる十分なシステムがそろっている職場だと思います. そしてこのレベルだと,事前に,いつ,どの程度までトラブルをコントロールできるか, かなり高い確率で推測できるように思います.まさに,ユートピア,桃源郷,はたまた天上世界か.


□ ちょっと一休み


初回から3回まで, 全く抽象的で,それでいて用語の定義がわかりづらいものだったと思います. 次回からは,実際の職場でみられるトラブルの事例をあげながら, より具体的な内容で「職場の力量」と「トラブルの側面」との関連性を解説していきたいと思います. なお,事例はすべて実話を元に私が多分に脚色したものです. どこの職場でもありそうなトラブル事例を集めましたので,期待してください.



p.s. 皆様へ.ジョークだと思って軽く読んでくださいね.決して自分の職場やうちの子どもが通っている職場に当てはめて考えないでください.






posted by kingstone at 13:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする