図書館で借りて来ました。
フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453))/堀内 都喜子

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2004年、OECDの学習到達度調査(PISA)で中学生が世界トップの成績を上げて注目されたフィンランド、それ以前から留学していた著者が留学時代からのことを書いたもの。
フィンランド 面積は日本から九州を取ったくらい。人口は530万人。ということは兵庫県とか福岡県くらい。
1平方キロメートルあたりの人口密度は日本の340人に対し17人!!
WEFによる国際競争力(基礎経済・行政のあり方・技術革新への取り組み、等様々な分野から持続的な成長を可能にする中・長期的な競争力)ランキング。
2001年 1位
2002年 1位
2003年 1位
2004年 1位
2005年 2位
2006年 6位
2007年 6位
主要産業 森林業、金属・エンジニアリング業、情報・通信技術(ICT)
企業 ノキア、UPM−Kymmen、Metso、FーSecure
しかしフィンランド人にとってもこの評価は「意外」残業はしないし、休暇は取るし。(週休2日。夏休みとかスキー休みとかは1週間)
12世紀以降、スゥエーデンの支配。だから公用語にスゥエーデン語もある。後にロシアに支配。1917年に独立を果たす。「日本が日露戦争に勝ってくれたおかげ」という人も多い。
第2次大戦では敗戦国・・・ってことは枢軸側で戦ったのか。あっ、Wikiによるとソ連と戦うため、ってことですね。
敗戦国の中では一番最初に賠償金を払い終え、1952年のヘルシンキオリンピックで復興の速さを世界に見せる。
しかし1990年代はじめ、経済危機に。失業、不動産価格の暴落、貿易の衰退、銀行危機。1993年12月、失業率20%。街には失業者が溢れ、食べ物を買うお金もないという人が食料援助に列を作って並び、地域によっては学校が、家で食事の摂れない子のために週に一度、朝食を用意したりした。銀行危機によって金利急騰、14%台へ。(今は4%台)そこで政府が積極的な対処。
オッリ=ペッカ・ヘイノネン氏(29歳!!で教育大臣。2002年までは運輸大臣。家族との時間を大切にしたいと国内最大のテレビ局YLE(フィンランド国営放送)の社長に転出)の意見によると
・銀行危機に対し、銀行の改革・再生。銀行債務の支払い保証。
・IT産業の振興。投資。(ノキアがその例)
・他分野の徹底的予算切り詰め。企業もリストラ。(公共サービスも低下)
・変化や改革をになう人材への投資。教育制度改革。(学校の統廃合。文房具支給を減らす。(ってことは支給されてたってことだ)給食費切り詰め。教科書は次年度も使い回し。)
「政治家の役割は、国がいかに危機に瀕しているかということを国民に知らせ、それを克服するには大きな変化、痛みが不可欠であるということをわかってもらえるように説くことだし、そして状況を判断しもっともふさわしいといえる決断を迅速におこなうことだ。」
現在、フィンランド経済の成長を支えるのが、高度な教育と、研究開発への投資。産学官の連携。
とはいえ、大学は授業料を学生から取らないため、援助が無ければ研究もできない。研究のプロジェクトチームの計画が立つとまずスポンサー集め。資金のめどがついてからようやく研究が始まる。修士レベルの学生が企業に委託されて研究をし、修論を書くのはよくあること。文系分野は資金援助が得にくいということも。
そのためかどうかフィンランド人は気持ちや感情といったソフト面よりも効率を重んじる。
無駄な労働力を省く。(著者の留学していた)ユヴァスキュラ市(人口8万)で国際課は1人。広報課は3人。人件費が一番高くつくので。(ただしレストランでウェイトレスがなかなか来てくれない、というようなことも)
また製造は外国で、ということになってきている。(これは日本もやなあ)
著者は小学校で日本文化を紹介したりした。その時の経験などで見たこと。(だから詳しいことはわからない)
ある保育園(?)で。そこには4歳から12歳までの自閉症児を対象とした特別クラスが設けられている。当日は、それぞれの子どもたちに、一人一人についているアシスタント役の先生と、普通クラスの保育園児が加わってとてもにぎやかだった。自閉症児といっても、地理や数字に強い関心のある子、著者の手を握ったまま離さない子、まったく話せないが一生懸命話を聞いている子、と様々だった。
この時、日本の有名な昔話ということで「花さかじいさん」のフィンランド語訳を読んであげたが「なんで犬が殺されてしまったの?」「どうやって殺したの?」と矢継ぎ早に質問された。(これは自閉症児かな?保育園児かな?)
別の小学校1年クラス。21人。(25人まで。しかしフィンランド人に言わせるとこれでも多い、とか。また地方では複式学級が当たり前)体の障害を抱える子、学習障害のある子のクラスにはアシスタントをつけるのが普通。言葉のわからない外国人の子がいる場合は通訳をつけることも多い。このクラスには糖尿病の子がいたので「まだ教師になる勉強はしていないが子ども好き」という高校出たての若い女性がアシスタントとしてついていた。インシュリン注射をしてあげたり、担任の手助けをしたりする。アシシタントやボランティア、時には保護者もいる。
地方分権化が進み、学校や教師に多大な決定権が与えられている。始業時間もバラバラ。教師は地方公務員ではなく学校に所属。校長は限られた予算の中でやりくりし、教師採用の権限も持っている。
小学校3年から英語が始まる。
なお、フィンランド語は英語とは単語・文法ともにまるっきり違う。しかし一般的に英語はしゃべることができる。例えば著者が小学校6年生のクラスを訪れた時は英語で質問してきた。(これは外国人にとってフィンランド語が難しく、通じにくいため)また街でもフィンランド語が通じにくそうと思ったら英語で話しかけてくれる。
これはテレビ番組やゲームに字幕つきのものが多いということも関連しているか。
中学・高校に校則というものは無いに等しい。私立高校は無い。フィンランドの高校進学率は低い。高校間の「進学校」「レベルの低い学校」という意識は無い。手に職をつけたい子は職業専門学校に通う。
小学校・中学校に卒業式は無い。しかし高校の卒業式は大々的に祝う。行けなかった人にとって憧れも強い。
1年間の授業時数。日本700時間以上。フィンランドは小学校低学年500時間台。高学年600時間台。OECDの調査国中もっとも少ない。塾も無い。家庭教師も無い。OECDの調査で中学校では4割が遅刻し、2割が授業をさぼっている。学校が嫌いな子も多い。フィンランド人自身が学力1位という結果に驚いている。
教職は人気があり質が高い。大学の教職課程を修了していれば資格ありとされる。しかし、この「大学」というのがよく読むと日本の大学院レベルのよう。また教職課程を取ることがたいへん狭き門。
ただし、ここで言う、教職とか教師というのはあくまでも「正規採用の正規の教師」であるみたい。教師を目指す学生は、大学を卒業する前から代用教員をして経験を積んでいく、という記述もあり。
教師は伝統的に人気が高い。給料はけっして高くない。フィンランドの言葉「教師は国民のろうそく、暗闇に明かりを照らして人々を導いていく」
フィンランドのクラスに学力差は少ない。落ちこぼれを出さないような工夫も。しかしそれは授業のレベルは全体的に「むつかしくない」ということもある。また移民が他の国に比べて少ない、ということもある。しかし、現在、移民のことは話題にはなりつつある。
これは他の北欧各国では移民問題がもっとクローズアップされているため比較してのことらしい。例えばこんなことも
私が『北欧を見習わなくなった』わけ・・・デンマークの場合・・・移民政策も楽じゃない 最近は中東・中央アジア・ロシア・アフガニスタン・イラン・イラクなどからも。
総合大学は、学科によって入るのが相当むつかしい。ユヴァスキュラ大学のコミュニケーション学科では入学できるのは志願者の3%。入学平均年齢は23歳。高校卒業後、短期のコースで専門科目を学んだり、国内・海外でアルバイトをしたり、徴兵に行ったりしてから入る。
すべての大学が無料で逆に500ユーロ(8万円くらい?)お金を貰える。これでつつましくすれば生活していける。(これは入学者が少ないのとうらはらの関係だろう)学生でいたければいつまでもいられたが、近年、年限を制限すべきという議論が出てきている。
留学生への制度。
・チューター 様々な相談にのってくれ、手助けしてくれる。
・サバイバルキット 料理道具・皿・ナイフ・フォーク・布団・枕・シーツなどのセット
・ホストファミリー 一緒に住んでいるわけでなく、時々交流する。
生涯勉強に対する強い意欲。
2004年、フィンランド成人の45%が職業関連の訓練や教育を受けている。
アホラ・オッリ家の例。
夫カイ。
養豚業。EU加盟(自由化ということか)でうまくいかなくなる。
↓
製材所で勤務。通信教育で森林業の勉強。
↓
森林エネルギー関係の会社設立。順調に。
妻マリア=レーナ
中学卒業後海洋学校へ。カイと出会い、学校をやめてマッサージや健康管理の勉強。
↓
健康センターで仕事。
↓
夫と一緒に養豚をしていたが、それが無くなったので定時制高校へ。(子どもも高校生)
高校は単発授業を受けるのは3千円〜6千円。しかしすべての授業なら無料。
↓
薬剤師になるのが夢。
専門大学で講師をしていた友人。
↓
「教えるには教師の資格があったほうがいいかな」と教師養成コースへ。(ほぼ通信制)
↓
コースを終え、常勤講師に昇格。
勉強熱心の背景には、超のつく学歴社会ということがある。ただし「どこの大学を出た」ではなく、「どんな勉強をしたか」冗談ではあるらしいけど
「掃除をするのにも掃除の勉強を専門学校でしていないとだめなんだよね」
フィンランドはヨーロッパの中でも物価が高いので有名。
食品は日本より少し安い。レストランでの食事、電気製品、高級品などは日本より少し高い。車の値段は日本の倍はする。
ただしそれらは消費税こみ。食品で17%。他の商品やサービスは22%。ガソリンは60%。
所得税も少くても20%。少し多くなると30%。
「税金は高いのは嫌だけれど、その税金の恩恵を受けて生活しているので、しようがない」というのが大勢。
これは環境や健康を守る面も。車を使いにくい。→環境が守られる。たばこ・酒の税金が高い。→健康が守られる。
実際、酒税率が下がった時、街に酔っぱらいが増えた、という調査結果がある。
医療。健康センターで安くかかることができる。高度で信頼性もある。ただし医師不足は深刻。休日に開いてる健康センターを探すのに100キロも車を飛ばすとか、健康診断の予約を申し込んだら何か月も先になるとか。39℃の熱は「緊急」の状態とは言わない。だからフィンランド人は異様に我慢強い(?というかその状態を強いられている、かな)
私営の医院もあるが、高い。(ただし、記事中には「1回の診察で何千円」と書いているからそうでもないのかも。アメリカだったら何万円もざらみたいだし)
国からの子育て支援はすごい。
「フィンランド人の友人は『学生で未婚の母だと、へたに働くよりも国からたくさんの手当がもらえるんだよ』と冗談まじりに教えてくれた。」
フィンランドの合計特殊出生率は1.8。日本の2009年は1.37。
フィンランドで、男女が出会う場所の一番人気は「ディスコ」「パーティー」「バー」
ネットの「出会い系サイト」新聞雑誌の「友人募集広告」
あと「学校での友達」
親と同居という考えはフィンランドには無い。
しかし週に一度以上親と会うという人は全体の60%。
300キロ〜400キロ離れた親のもとへ毎週末行くという人も多い。
つまり親子関係を重視していない、というわけではない。
国会議員200人中女性が84人。(2007)
前々回の大統領選の7名のうち女性が4人。
現在大臣の半分以上が女性。
2005年の運輸通信大臣になった女性は30台前半。(これまた若い!)
タルヤ・ハロネン大統領(女性)ただし大統領の権限はアメリカよりは弱い。首相の力も強いが、2003年は女性首相。
また男性首相であるがリッポネン氏は1週間の育休を取った。
外国人にはとてもまずいお菓子「サルミアッキ」が大好物。
「フィンランドは宮廷文化といえるものがなかったためか、食文化はそれほど重要視されてこなかったのだろう。きちんとした食事は1日1度だけで、あとはパンやおかゆ、ヨーグルトですませる人も多い。とにかく胃の中に何か入れればいい、といった感じ」
友人を食事に招く風習は無い。しかしコーヒーとお菓子を用意して招待というのがある。
金曜の夜や土曜の夜には街でベロベロに酔っぱらい、倒れている人を頻繁に見る。
マイナス10℃でも赤ちゃんを戸外でお昼寝させる。これは季節に関わりなく。それでアメリカに行った夫婦が同じようにしたら「育児放棄・虐待」で通報された。
スゥエーデンが嫌い。(国と国との関係は良い。これは支配被支配の関係があったせいか。スゥエーデン・フィンランド・ロシアの関係は日本・韓国・中国の関係に似ているかも)
家も自分で作る。「家を作るのは男の仕事」しかし、実はこれが結構負担で、「家作りの意見の相違」が離婚原因の1位。2位は「子づくりの意見の相違」
フィンランドの家には浴槽が無いことも多く、普段はシャワーですませる。しかしどこでもサウナがある。
フィンランドは静か。またフィンランド人は沈黙を好む。飛行機やバスなどでたまたま隣になった人や食堂で隣になった人と会話するということもあまり無い。(ただお酒は入るとコロッと変わる)疑問形の語尾が上がらない。アクセントやトーンの上下があまり無い。会話の時、相手の目をじっと見ているだけで、あまり相づちもうなずきもしない。フィンランド人が話していると悲しそうに見えたり、つまらなそうに聞こえる。全体に声の調子が低く、ささやくように話す人が多い。
相手を中傷する言葉の語彙は多い。性器やバカみたいな。
店員に「トイレありますか?」と尋ねると「あります」という答えが返ってきて、「どこそこにあります」の答えは返って来ないだろう。
フィンランド人はあまり「決まり文句」の挨拶や抱擁・キスなどの挨拶はしない。「ヤア」と言うか、目であいさつ(って黙礼?単に見るだけ?後者っぽいな)するだけが多い。だからフランス人やイタリア人からは失礼で冷たいと見られる。日本人だと「そんなもの」
フィンランド人学生はカンニングをしない。(著者は日本人みたい、と書いている。まあ日本でもする人はするけど)(これは学校のシステムで、する必要の無い習慣ができているのかな)
フィンランド人ビジネスマンに著者が日本人のコミュニケーションについて講義した時に出た質問。
「どうして日本人は同じ質問を何度も何度も繰り返してくるのか」これは念には念を、かな?
「メールの内容がわかりにくい」時候の挨拶とか遠回し表現かな?
「なぜ企業秘密をしつこく聞いてくるのか」これは日本人は気にしてないのか?
「決断が遅い」上司の意見を聞かなければ、というやつかな?
「要求が多すぎる」ついあれもこれもになるか。
「言いたいことがよくわからない」遠回し表現かな。
いやあ、何か面白かったです。