図書館で借りて来ました。
ヤバい経済学 [増補改訂版]/スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー
¥2,100
Amazon.co.jp
「Freakonomics」の訳
スティーヴン・D・レヴィットはシカゴ大学の経済学者
スティーヴン・J・ダブナーはジャーナリスト
ブログは
http://freakonomics.blogs.nytimes.com/ めっちゃ面白かったです。今日中に返さなければならないので走り書き。
レヴィットはインセンティブで何事も考えようとしてはる。これは「行動すると得られるもの」と考えればいいのかな。金銭的インセンティブもあれば社会的インセンティブ・道徳的インセンティブなんてものもある。
この本は、もともとはレヴィットが書いた論文を元に一般にわかりやすく書いた本、と考えたらいいのかな。
時間が無いので、引用抜きですっとばします。不正確な点が多々あるかも
保育園への親のお迎えが遅れるのを何とかしたいと経済学者が相談を受け、イスラエルの10か所の保育園で実験してみた。
まず、初めの4週間、何もせずにデータを取っただけ。
1つの園、週あたり8件の遅刻。
次に10分以上遅れた場合、3ドルの罰金を課してみた。
週あたり20件に増えた。
これはわかるなあ。1回300円で延長保育します、と言われたら利用する人はたくさんいるだろうから。
「それじゃあ罰金が3ドルではなく100ドルだったら?たぶん遅れてくる親はいなくなるだろうが、代わりに大変な恨みを買うことになるだろう(インセンティブにはもともとトレードオフがつきもので、両極端のバランスをうまくとるのが大事である)。」
「しかし保育園の罰金制度にはもう一つ大きな問題があった。道徳的インセンティブを経済的インセンティブに置き換えてしまったのだ。(中略)調査の17週目になって経済学者が罰金をやめても遅れる親は減らなかった。遅れて来た人たちは、罰金を払わされることもなく、そのうえ罪の意識も無くなった。」
アメリカで一夜にして子どもが700万人も消えた。
1987年、4月15日に税務署が扶養控除にそれまで名前だけで良かったのに子どもの社会保障番号を書かなければならないようにした。700万人が消えた。(それまで明らかにペットの名前で扶養控除申請をしていた人なんかもいた)
やっぱり、基礎番号というか国民総背番号制というのか必要なのかも。ホリエモンも、そうすれば徴税コストが劇的に下がるって言ってるな。
学校の先生のインチキ。
2002年にブッシュ大統領が署名した「一人も落ちこぼれさせない法(No Child Left Behind)」これは一発勝負のテストを義務化したもの。
シカゴ教育委員会は1996年から一発勝負テストを導入し、その出来によって学校の観察処分・学校閉鎖・職員のクビなどをした。カリフォルニアは点の良かった先生に2万5千ドルのボーナスを出した。
で、レヴィットは教育委員会の要請で試験結果からインチキをしている先生をあぶりだすアルゴリズムを考え出し、実際にクビになる先生も出た。
カリフォルニアもすぐにボーナスをやめた。
大相撲の八百長。
この本が出版された時に、思った以上に日本からの反響が無かったとか。・・・みんな知ってるけど、言っちゃいけないこと・・・だからかな。
レヴィットは相撲雑誌の公的なデータから7勝7敗の力士の異様に高い勝率(8割)を出します。ここまではよく知ってましたが、その他に、その8勝した力士が次に相手の力士と対戦した時の低い勝率その他その他を出して証明していきます。
以下の事件は完璧に記憶から抜けていた。
相撲の八百長疑惑を取材しているときに同じ病院で急死したジャーナリストが二人い... 相撲の八百長を告発していた菅孝之進氏(元関脇高鉄山、前大鳴戸親方)と橋本成一郎氏が書籍の出版直前、同じ日(96年4月14日)に同病院で同じ病気により二人とも死亡してしまったという事件がありましたね。
ちなみに、元大鳴戸親方は午前4時45分。橋本氏は午後7時48分に死亡しています。
病院は愛知県豊明市の藤田衛生大病院です。
死因は重症肺炎及び心不全 とされています。
また、週刊ポスト誌上で大相撲の八百長、脱税疑惑などの暴露記事を連載中。
記事内で証言者として登場していたのが、橋本成一郎氏(北の富士の後援会副会長だった)
どう考えても・・・口封じですよね・・・。
KKK団がいかにして力を失っていったか。
徹底的に内部の情報を外部に出した(つまり情報を公開)ライターがいたからだそうです。ただし、このライター、他人が入り込んで得た情報も、自分が入り込んで得たみたいに書いてたそうで、そこんとこが残念がられてます。
売人がママと暮らしているのは?
クラックなど麻薬の売人ですね。要するに収入が低いから。
スディール・ヴェンカテッシュ
インドで生まれたと書かれていますが、インド系つまり非白人ということでしょう。1989年にシカゴ大学の社会学博士課程に進み、クリップボードと選択式の質問70個のアンケートを持って、シカゴで一番貧しい黒人の住む界隈へ、実地調査に出されます。アンケートの最初の質問
ご自分が黒人で貧しいことについて、どう感じていますか?
a.とても悪い
b.悪い
c.良くも悪くもない
d.いくらか良い
e.とても良い
いや〜〜、これを一読「相手が怒り出す」「下手すりゃ殺される」と思いましたが、ヴェンカテッシュは思わなかったんだろうか?で、彼は行き、まじめに聞きます。
実際、ギャング集団に囲まれ殺される危険もあったのですが、親玉が出てきたりし、質問から24時間後に彼は解放されます。彼は質問事項にこれを書き加えるべきだと後で語ったとか。
f.ファックユー
解放されてから数時間後、彼は戻り親玉に提案し6年間そこで研究(?)を続けます。
で金庫番から会計データをもらったりして、それが後の論文になっていきます。
まあ、実際、質問紙法でわかることはそう無いわなあ。もちろん研究には「入り込んで見た」ことだけでなく、会計データがおおいに役に立ったのだからデータが大事じゃない、ということでは無いのですが。
映画「DisLocation」
中絶が犯罪を減らす。
ルーマニアの独裁者チャウシェスクは1966年に中絶を禁止した。例外は4人以上子どものいる女性と、共産党の高い地位にいる女性。同時に避妊や性教育も全部禁止された。担当する政府の役人は皮肉をこめて生理警察と呼ばれ、定期的に女性の職場を巡回し妊娠検査を実施した。女性が何度も妊娠しないでいると、高い「禁欲税」を払わされた。
中絶が禁止されてから生まれた世代をその前の世代と比較すると、学校の成績は悪く、仕事で成功することもなく、犯罪者になる可能性はずっと高くなっていた。
チャウシェスクが斬殺されたのにはこの若者たちの手によるところが大きい。
アメリカでは1990年まで犯罪は激増していくように思えた。これはクラックブームのせいもある。(Crack epidemic )アメリカでクラック・コカインの使用率が急激に高まった 1984年〜 1990年までの6年間のことである。
専門家たちは「血の海」になると言ったがそうはならなかった。
ひとつにはクラックの値下がりによりギャングの儲けが少なくなり、抗争するインセンティブが減ったこと。
あと統計を見てみると1973年1月17日の「ロー対ウェイド」裁判に対する連邦最高裁判決が出て中絶の合法化が一気に全国に広がったのが大きい。これをレヴィットはそれ以前に合法だった州の統計結果、それ以後の全国の統計結果を示して証明していきます。
確かにこの判決の結果、中絶をしようと思うのは「結婚していない」「ティーンエージャー」「貧しい」あるいは3つ全部の女性であり、もしその子が生まれてきていたら犯罪を犯す確率は高くなるでしょう。私の周囲(日本)でもそういう例はあまり幸福な結果にはなっていないような気がします。
でも、これは・・・「中絶を認めさせよう派」からも「中絶禁止派」からも非難囂々な意見だろうな。そして実際そうであったらしいです。
でも「いやだけれども本当のこと」なんだろうな。で、大事なのはそこをきちんと確認しつつどう行動するか、なのだろうと思います。
あと、犯罪の減少と相関のあった条件は2つ。
警官の増加。
起訴され罰せられること(これは警官の増加とも関連するでしょうね)
で、ニューヨークのジュリアーノ市長の「割れ窓理論」は有名ですが、実は犯罪が減ったのは「割れ窓理論」の効果では無く、それ以前の市長が警官を増員していた効果であるらしいです。
子育て
銃とプールの危険性
親が子どもに、銃のある家に遊びに行っちゃいけないと言い、プールのある家に遊びに行っていい、ということはよくありそうですが、実際の死亡率はプールは銃の100倍!!しかし銃はニュースになり、プールはニュースにならない。
リスク・コミュニケーションズ・コンサルタントのピーター・サンドマンの言葉
「本質的な事実として、人が怖がるリスク要因と人を殺すリスク要因はまったく別なのです」
「自分でコントロールできないリスク要因に比べると、コントロールできるリスク要因は怖がられないのです」
例えばBSE(コントロールできないが起きることは少ない)と食中毒(台所を清潔にしたりとかコントロールできそうだが、頻繁に起こる)
あと車の運転なんかもコントロールできると思ってしまうほうに入るかな。でも事故はたくさんある。
遺伝か環境か育て方か
「育て方」それだけを見ると成績などに差は出ない。遺伝がほとんど。しかし、結局環境というか周囲とかチャンスとかが関係はしてくる。で、親が「こう教育しよう」と思うよりも、既に「親がなっている」ものにより関係する。
1990年代後半。アメリカ教育省の「初等教育の縦断的調査(ECLS:the Early Childhood Longitudinal Study)による親の要因と学校成績の調査。
成績と相関(注。相関であって因果関係では無い。また負の相関もあり)のあった項目。
・親の教育水準が高い。
・親の社会・経済的地位が高い。
・母親は最初の子どもを生んだとき30歳以上だった。
・生まれた時未熟児だった。
・親は家で英語を話す。
・養子である。
・親がPTAの活動をやっている。
・家に本がたくさんある。
相関の無い項目。
・家族関係が保たれている。
・最近よりよい界隈に引っ越した。
・その子が生まれてから幼稚園に入るまで母親は仕事に就かなかった。
・ヘッドスタートプログラムに参加した。
・親はその子をよく美術館に連れて行く。
・よく親にぶたれる。
・テレビをよく見る。
・ほとんど毎日親が本を読んでくれる。
ひとつひとつの項目につき、なぜそうなのか、という理由はいろいろあります。またこれはあくまで「学校の成績」との関係で「幸せ」との関係では無いですけどね。
養子の育ち方
養子に来る子は、養親よりいろんな意味で恵まれていない資質の子が多い。だから養親のいい環境で育っても、学校の成績は悪い(養親と比べて?)。しかし、大人になるといい環境・チャンスなどで幸せな人生を送ることが多い。
これは、レヴィットの研究すべてに言えるけど、「ひとごとじゃない」話。レヴィット自身、子どもを小さいときに亡くし、養子を育てている。
トイレットトレーニングに失敗した話
娘(養女)のアマンダ。おまるでしなくなったため、レヴィットが任せとけとやってみた。おまるでできるとM&Mチョコを一袋あげることにしたら一発で成功・・・と思ったら何回目からか、ほんの3しずくほどおしっこをしてはチョコを貰おうとするようになった。
あはは、これは何故失敗したのか、どうすりゃ良かったのか、わかりそう。
追記 もひとつ印象的なエピソード
本を出版してから売春婦さんが電話して来てくれた。でもってインタビューに行った。この人はなかなかのやり手みたいで、もとITプログラマから転じて週2回働いて(たぶん年)25万ドル稼ぐ。時給を聞いたら300ドル。でレヴィットは聞いてみた。「注文の電話が鳴ったら嬉しいですか。嫌ですか」答えは「どっちでもない」でレヴィットのアドバイス。「それは料金を上げたほうがいい。電話が鳴った時に嬉しくない、というのは適切な価格で無いから」
後日、この女性にシカゴ大学でその年の最終講義をしてもらった。学生たちのアンケートでは「今までの講義で最高に良かった」という回答がいくつも。
講師料を支払うだんになって時給を聞くと400ドルだと言う。300ドルじゃなかったのか!と心で思っていたら「あなたのアドバイスに従って値上げしたの」
レヴィットのアドバイスを実行してくれたのはこの人が初めてだって。