漂流少女 夜の街に居場所を求めて/橘ジュン

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橘ジュンさんはもとレディース(暴走族)別に地域一番のバリバリだったわけではない、と書いてはりますが。
ジャーナリスト栃内良さんの取材を受け、それをきっかけにラジオに出たり、全国のレディースを取材するレポーターになったりします。でレポートをする時に台本があるのだけど、放送ではしめくくりがその人たちの
「気合い入ってます」
で終わるようなもんだったけど、でも話しているうちにもっと違う語りたいことがあるのだなあ、と気づいていかれます。
その後、アルバイト生活をしながら、リスカしまくっている後輩に出会ったり、引きこもっている娘に出会ったり。
そういう体験から、路上に出ている若い娘たちの本音を伝えられる媒体はできないか、と考え始めます。
そして路上にいる若い娘たちの話を聞き、それをVOICESという自分たちで作ったフリーペーパーに書いていきます。
VOICES
橘さんの姿勢は
「”救う人”でも”止める人”でもないけど、こんな私で良かったら話を聞かせてください、というのが私のスタンスだ。」
「何度もくり返すけれど、私は、自分が知りたくて、聞きたくて、伝えたくて『VOICES』を始めた。悩んで困っている人を私なら救える、助けられるはずだと思って、この活動を始めたわけではない。」
です。とか言いながら、様々な援助をしようとされるわけですが。また
「『危ない子は専門家にまかせたほうがいいのでは』『死にたい、自分を傷つけたいという言葉を引きだして伝えて、責任が取れるのか』と言う人もいる。それでも私は、他人だけど『彼女のことをわかりたい』と思っている存在があるってことを、彼女たちに伝えたい。」
と書いてはります。もちろん専門家は大事。だけれども専門家だけで世の中回っていかないのも本当。っていうか大事なのは周囲の普通の人たちだと思います。
エピソードはどれも重いけれど、面白かったのが、いわゆるヤマンバ・ギャルの娘さんをプロのヘアメイク・アーティストとスタイリストの手で変身させてみるという企画。もう周囲が「可愛い、カッコイイ」で、本人もすごくびっくりしてた、という話。なるほどな。プロってすごい。
「話を聞かせてもらう」だけじゃなくて、妊娠した娘さんを出産のために入院させたり、その後の生活のために支援しようとしたりされます。この助力が無かったら、この娘さんはトイレで出産し、産まれた子供を殺していたのじゃないかと思われます。
またこの娘さんは産まれて来た子と暮らしたいと思い、橘さんもできれば本人の希望に添うようにしてあげたいと思っていたようですが、対応したケースワーカーや児童相談所職員の判断で赤ちゃんは乳児院に引き取られます。ここんとこはワーカーさんや児相の判断が結果的には正しそうな気が・・・
昨今、報道される虐待死や、トイレでの放置死など、こういう場合が多いのだろうな。
結局、橘さんは活動の延長としてNPO法人を立ちあげ、さまざまな活動をしておられます。
bondproject
またこんなインターネット・カフェを経営もしてはります。
MELT
なんだ商売じゃねえか、っていうご意見もあろうかとは思いますが、継続する活動を行政からの支援なくやっていくにはお金もうけは大事な視点だと思う。(しかしここの値段って競争力のある値段なんだろうか?)
で、私の興味関心の領域で言うと、この路上の娘さんの中には結構な割合で発達障害の子もいるんじゃないかなあ。
ずっと「普通」になりたかった
でグニラ・ガーランドがドラッグとセックスの日々を送っていたように。そしてもちろんもっとたくさんの女の子や男の子が引きこもっている。そういうことなんじゃないかなあ。
で、たぶん支援ってやつは、「専門家」を待ってるわけにはいかない部分が多々あって、気づいた人から始めなきゃなんない、ってところがあるのだと思います。