この話、わかる人にはすとんとわかる話です。
ここで言う筆談は単に「書いて伝える」「書いて返答してくれる」という
もの。ひょっとして「何だ「字」や「単語」や「文」がわからなければでき
ないのか」と思われるかもしれません。そんなことはありません。
本人さんのわかるもの(具体物・絵・写真・文字・文章他何でも)で伝え
本人さんのできる方法で表現(具体物を手にとる、絵や写真を手に取る、何
かを指さす、絵や写真などをとんとんする、単語カードや文章カードをとん
とんする、単語や文章を書く、VOCAで発声する、音声言語で言うetc.)する。
* VOCA(Voice Output Communication Aid 音声出力コミュニケーシ
ョン装置)
この時、必ず本人さんの選択活動が入ってきますね。
(すごい文学作品だって、表現は選択活動の結果です)
本当に表現の少ない方には「2種類の飴を用意してどちらかを選んでもら
う」なんてとこから始める必要があるかもしれません。
自閉症またはそれに類するコミュニケーション障害の方には、自分が表現
したことが「道具として使える」(機能的に使える)という経験をつまない
と積極的には使うようになってくれません。また「間違った使い方」を覚え
てしまうこともおうおうにしてあります。
「うまく伝わった」「思いが実現した」という経験(好きな方の飴がもら
えた、でも)が多くなればまたその方法を使おうとしてくれます。
大昔AACの会(正式名称忘れました。ATACの前身みたいな会)が開かれ
た時(知的障害特別支援学校ですから事例はたぶん自閉症の方)VOCAを使って
いたら機能的な音声言語が出るようになった、という事例が報告されました。
会場からは「これは単なる一例であり他に適用できる話ではない」という意
見が出ました。当時の科学的態度としては素直にそうでしょう。
ただ、今、だともう集める気になればこの手のデータはごろごろ出てくると
思います。私の12年前の「VOCAの利用」も1例です。
事例を集めてデータを論文にしてくれたらいいのにな>研究者さん
ただし「音声言語の理解や表現を求めて代替手段を使う」というのは間違い
です。あくまでも本人さんの使いやすいものを用意していたら「結果として音
声言語の理解や表現「も」できるようになった」というだけです。
そして「音声言語の理解や表現ができるから周囲もそれ「しか」使わない」
ということになるとまたも自閉症や類するコミュニケーション障害の方を苦し
めることになります。
私が「応用行動分析」で紹介した「応用行動分析学入門」はもう13年前に出
た本なんですね。この中にこんな文があります。
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「これに対して、行動分析学的立場の下では、口話のような音声モードで
あれ、手話や書字のような非音声モードであれ、必要な社会的な機能を
満たす上で、障害児者にとって最も負担なく、あるいは本人自身によって
選択された表現モードが、優先的に用いられなければならないことになる。
(Reid & Hurlbut,1977)」
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何と元発言は33年前かあ・・・・
言葉はむつかしいけど要するに「わかるようにやんなはれ」ですね。